研究実績の概要 |
本研究では、化学物質の周産期曝露が幼若マウスの鳴き声(超音波発声)に及ぼす影響を調べ、行動評価試験における超音波発声の有用性を検討することを目的として実験を行った。 平成29年度には、ダイオキシン類の中で最も毒性の強い2,3,7,8-四塩素化ジベンゾパラジオキシン(TCDD)の経胎盤・経母乳曝露が超音波発声の抑制を引き起こすことを明らかにした。そこで本年度は、TCDDと比べて10分の1程度の毒性をもつと考えられている2,3,7,8-四臭素化ジベンゾフラン(TeBDF)、ならびにほぼ毒性を持たないと考えられる2,3,8-三臭素化ジベンゾフラン(TrBDF)を用いて超音波発声への曝露影響を調べた。その結果、TeBDF曝露の場合はTCDD曝露用量の約10倍量を曝露することで超音波発声の抑制が生じることが分かった。一方、TrBDF曝露の場合はTCDDの約100倍量を曝露しても超音波発声への影響は認められなかった。さらに、ダイオキシン類曝露により発現誘導が引き起こされるCyp1a1、Cyp1b1、Ahrr遺伝子の発現量について調べた。TeBDF曝露をうけた幼若マウスの肝臓ではこれらの遺伝子の発現量が増加していたのに対し、TrBDF曝露マウスの肝臓では発現量の変化は見られなかった。 これらの結果から、ダイオキシン類の毒性の強さを反映した超音波発声の抑制を捉えることに成功し、加えて超音波発声の抑制について遺伝子の発現解析に基づく曝露影響と矛盾しない成果を得ることできた。
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