高等真核生物では、コヒーシン及びその染色体結合を手助けするコヒーシンローダーが転写調節機能を有し、発生、分化において重要な役割を果たしている。これらコヒーシンおよびローダーの変異は、身体的発育、精神的発達の遅延症状が見られるコルネリア・デ・ランゲ症候群(CdLs)の原因(約8割の症例)である。所属研究室はコヒーシンやローダーが転写伸長を調節しているという新規知見を得てきた。しかし、コヒーシンやローダーがどのように制御され、どのように転写伸長反応に組み込まれているのか、その詳細なメカニズムは不明である。 転写伸長反応中には多くの制御因子がRNAPolIIの活性と連携して安定なRNA合成が起こる。しかし、この転写伸長調節機構においてコヒーシンやコヒーシンローダーは、どのような因子と協調し、どのような機能を果すのか、その分子機序については不明である。 網羅的にコヒーシンローダーと相互作用する因子を探索し、同定された複数の結合タンパク質には、転写伸長因子複合体(SEC)を構成するものが含まれ、SECは転写伸長反応中に一時停止したRNAPolIIを活性化させることが知られていることから、コヒーシンローダーはSECと相互作用し転写伸長反応を制御しているのではないかと仮説を立て検証中である。
|