今年度はこれまでの調査に続き、主として職域関係の台湾引揚者団体の会報、例えば『美波会報』、『南星会報』、『榕樹』(軍)、『台北州警友会報』(警察)、『たいてつ』(全国台鉄会連盟)、『台湾逓信協会誌』(台湾逓信協会)『社友会報』(台湾電力)など、また地域別の団体、例えば練馬方面台湾会、沖縄県台湾会、タイワンズクラブ、台中会、台湾馬公会などの会報について調査し、その成立の背景や趣旨などの基本情報、そして掲載記事の内容を確認・収集した。 これらの会報は全体として発行期間が短く、またその内容は親睦・交流がメインであるため、それぞれの団体の台湾観を抽出することは難しいが、調査を通して戦後日本で成立した台湾引揚者団体の実態をある程度把握することができた。 なお、今年度は台湾へ研究出張を二回実施し、台湾・台北市の各図書館で台湾引揚者による日台民間交流活動の台湾側の関連記事を中心に調査活動・資料収集を行い、現地の研究者と意見の交換を行った。 特別研究員PDとして研究課題に従事してきた三年間を振り返ると、博士号未取得者としての採用であり、また博士論文の執筆も同時に進めていたため、本研究課題は資料収集などの基本作業が中心となり、具体的な研究成果をまとめることができず、研究実施として不十分な面があった。しかし、3月末に博士論文を提出したため、今後この三年間の調査成果を活かし、事例研究という形で具体的な成果が発表できるように引き続き取り組んでいく。 研究発表について、2020年2月に出版された受入研究者である若林正丈教授の編著『台湾研究入門』にて戦後台湾の国定記念日・祝祭日について執筆した。また、2020年3月に刊行された獨協大学国際教養学部紀要『マテシス・ウニウェルサリス』にて博士論文の一章である「「移住支那人」の再認識―日本の台湾領有初期における地誌的文献に見る台湾漢人」を発表している。
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