研究課題/領域番号 |
17J07928
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 卓也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 寄主利用 / 遺伝子流動 / ツツキノコムシ / 食性幅 / 生息地断片化 |
研究実績の概要 |
1.国内における未記載種のツツキノコムシ科甲虫の発見および近縁種間での寄主利用の分化の解明 多孔菌類を寄主とするツヤツツキノコムシおよび近縁な未記載種間における寄主利用の分化を明らかにし,系統関係の推定を行った.北海道から南西諸島にかけてサンプリングを実施し、分子系統解析とオス交尾器の形態観察を行った.その結果,ミトコンドリアDNAのCOI領域の配列には分化の大きな4つの系統が認められ,オス交尾器の形態も各系統間で異なっていた.またこれらの各系統は寄主として利用する多孔菌類の種類,範囲にも違いがみられた.分子系統、形態、寄主利用パターンは同所的に分布する個体群のサンプルでも一貫して異なっており,系統間では生殖隔離の成立した隠蔽種であると考えられる.さらにRAD-seqを用いた系統解析に基づく寄主利用の祖先形質推定から,一部の系統で寄主利用の特殊化が生じていたことが示唆された. 2.断片化した生息地における空間遺伝構造:食性の異なる近縁な昆虫種間での比較 前述の研究で発見したごく近縁で同所的に生息しながら寄主利用幅(利用するキノコの種数)の異なる菌食性ツツキノコムシ科甲虫3種を対象として,生息地の断片化が空間遺伝構造に与える影響の種間比較を行った.市街地や耕作地などにより分断化された京都市近郊の森林を調査地とした.平成29年度は,野外におけるサンプリングの大半を完了し,予定していたマイクロサテライトマーカーのうち約半数の遺伝子座についてマーカー開発を行い,一部のサンプルについて遺伝子型を決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象としている未記載種については,当初の予定通り形態,寄主利用,分子系統の解析を完了し,新種記載を含む論文として投稿済みである.断片化した生息地における空間遺伝構造の調査では,サンプリングの大半を終え,分子マーカーについても予定の約半数を開発した.現在までに得られたデータから,生息地である森林と生息に不適な市街地・耕作地での移動抵抗性の解析を予備的に行ったところ,食性幅の狭いスペシャリスト種はより生息地の分断化の影響を受けやすいことを示唆する結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,補完的なサンプルの収集とマイクロサテライトマーカーの開発を行う.解析対象の3種全てについてマイクロサテライト12遺伝子座程度の遺伝子型を明らかにした上で,生息地構造が空間的遺伝構造に与える影響についての解析を本格的に行い,食性幅の異なる種間での比較を行う.生息地の連結性と遺伝的多様性の関係も解析する予定である.
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