研究課題/領域番号 |
17J07948
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 佑 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | X線 / Transition edge sensor / 走査透過型電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
本年度は将来の精密分光による広域X線サーベイをめざした大型TES型X線カメラ用素子とカメラシステムの基礎となる64画素の素子とそれを搭載する検出器ヘッドを検出器システムとして動作させるところまで研究を進めた。その結果、今後大規模アレイ検出器の開発及び製作に関し問題となる課題を明らかにした。特にTESカロリメータ内の超伝導遷移温度のばらつきによる素子毎の性能差を抑える方法を検討する必要がある。 さらに、この研究成果をX線微量分析を用いた宇宙物質研究に発展させる研究を進めた。宇宙物質としては、はやぶさに代表される隕石や宇宙探査ミッションが地球に持ち帰るサンプルを想定している。これらの鉱物に含まれる珪酸塩の水和物に太陽系初期の水循環過程が反映されていると期待され、それは酸素とケイ素の元素濃度比として現れる。研究開発した検出器と検出器ヘッドを走査透過型電子顕微鏡に組み込み、カンラン石の標準試料の分析を行った。これにより、TESカロリメータが従来の半導体検出器に比べ、一桁以上の分光性能の向上したエネルギースペクトルを取得することに世界で初めて成功した。さらにTESカロリメータを用いたX線スペクトル解析手法を新たに開発し、それを用いることで従来の半導体検出器に比べ系統誤差を10%から1%以下に大幅に小さくできることを示した。このシステムにより、近年のはやぶさに代表される宇宙物質研究に対し新たな視点や方法による研究の発展が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に従い研究を進め、今後の研究を進めていくための課題を明らかにしたことは研究をする上で大きな成果である。さらに、研究を進めていく過程で開発した検出器を応用し、まさに注目を集めているはやぶさに代表される宇宙物質分析の新たな研究手法を切り開いたことは大きな成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかにした64素子上での素子ごとの超伝導遷移温度のばらつきを抑えるために、現状の問題の原因を熱シミュレーションから探り、その結果から製作へとフィードバックする。フィードバック結果から最適な製作プロセスを構築し、32 x 32TESカロリメータアレイの実現を目指す。
|