今年度の前半は、昨年度に引き継ぎ、スーパーカミオカンデ(SK)における大気ニュートリノの荷電カレント(CCQE)反応由来の脱励起ガンマ線の解析を行った。 大気ニュートリノのCCQE反応由来の信号は、超新星背景ニュートリノ(SRN)探索の主なバックグランド成分である。CCQE反応で生成されるミュー粒子の信号から、脱励起ガンマ線の信号を識別できれば、SRN探索においてCCQE反応由来のバックグランド成分を正確に見積る事ができる。 その為、シミュレーションを利用して、ミュー粒子の事象からガンマ線を探索する手法を確立した上、SK-IVの十年間のデータで酸素原子核からの脱励起ガンマ線の信号探索を行った。解析を進める途中、チェレンコフ閾値に近いミュー粒子が脱励起ガンマ線と近似した信号を出すという新たな問題を発見し、それに取り込んだ。シミュレーションでその両者を区別する方法を確立し、問題点を解決した。この解析方法をもって、今後SKで脱励起ガンマ線のBranching Ratioというこの研究の最終的な結果が得られると見込める。これまでの解析結果をSKコラボレーションミーティング及び日本物理学会で報告した。 今年度の後半は、昨年度発表した中性子星合体GW170817に伴うニュートリノ信号探索という論文の解析結果を踏まえて、中性子星合体からニュートリノ放出の理論機構を理解し、その内容を国際会議Neutrino Telescopes Workshopで発表した。 また、今年度末に、以上二つの研究課題を博士論文にまとめた。
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