平成30年度は宣撫宣伝活動の理論と制度に関するメデイア史的な分析に力点を置いた。学会発表に関しては、第十二回ACS Crossroads in Cultural Studies Conference(2018年8月)で宣撫宣伝活動における映画上映の政策、構造とその製作思想の変遷を発表した。学術論文に関しては、上記の研究目的に沿って学会発表の内容に基づいて、一つの論文が掲載されることとなった。「建構植民意識的「宣伝」与「娯楽」:偽満農村電影巡回上映中的電影、挿話与演講」、『当代電影』中国電影藝術研究中心・当代電影雑誌社(2019年8月)では、宣撫宣伝工作における映画上映の前後と間で行われた講演のあり方とほかの複数のメディアとの協働に注目し、娯楽の内容と宣伝の内容がどのように組み合わせていたかを明らかにした。資料調査に関しては、国外では中国上海市電影博物館、黒竜江省ハルビン市の東北烈士記念館、侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館と黒龍江省図書館、吉林省長春市の満洲映画協会旧址である長春電影博物館と偽満皇宮博物院、遼寧省撫順市と瀋陽市の九・一八歴史博物館、遼寧省図書館と档案館、韓国ソウル市の博物館と図書館で、当時満洲国公的機関の文書や映画製作に関する雑誌や戦後中国政府による接収に関する資料などを調査した。上記の研究活動を通して、博士論文の土台とする一次資料を充分に把握できたことで博士論文の本格的な執筆が順調に進んでいる。
|