研究課題
本研究は,高エネルギー密度を有するマグネシウム蓄電池の実現を目指した新規正極材料および電解液の開発を目的としている.本年度は,特にスピネル型酸化物正極の研究において顕著な成果が得られた.蓄電池の正極材料には,高電位や高容量というエネルギー密度に直結する性能に加えて,高いサイクル特性が求められる.これまでの研究から,MgCo2O4などのスピネル型酸化物が高電位かつ高容量の正極材料として作動することを明らかにしているものの,サイクル特性が乏しいことが問題点であった.これらのスピネル型酸化物ではMgイオンの挿入(放電)に伴い岩塩型構造への構造相転移を生じ,それが二相共存反応で生じることから(i)粒子表面で生成する岩塩相がMgイオンの拡散を阻害することや(ii)スピネル相と岩塩相の二相界面における局所ひずみが引き起こす活物質の破壊が劣化の要因として考えられた.そこで,二相共存反応を回避したMgイオンの挿入を可能にする方策として,これまでは化学量論組成のスピネル型酸化物AB2O4に着目していた一方で,八面体サイトにカチオン欠損を有する欠陥スピネル型酸化物ABO3の利用を着想した.さらにこれまでの研究で構築したカチオン選択の指針に従って組成を定め,有望な材料としてZnMnO3に着目して詳細な調査を行った.その結果,従来の化学量論組成のスピネル型酸化物では10-20サイクル程度で容量の低下が見られる一方で,欠陥スピネル型酸化物ZnMnO3では主に単相反応で充放電が進行し,約100 mAh/gの比較的高い容量と2.5 V程度(Mg基準)の高い電位を保ちながら100サイクルを超える高サイクル特性が得られることが明らかとなった.以上から,高エネルギー密度と高サイクル特性を両立するスピネル型酸化物の設計指針として,欠陥スピネル型構造に着目した単相反応の利用が有効であることを示した.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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