本研究では、次世代において必要不可欠であるものの未だ発展途上にある、固体触媒による環境調和型液相有機合成の普及のため、「高機能固体触媒の精密設計及び素反応制御を基盤とした高難度環境調和型分子変換の開発」を研究課題と定めた。(1) 固体触媒の精密制御、(2) 素反応制御及び反応機構解明、(3) ファインケミカル及びバルクケミカルにおける高難度精密分子変換反応の開発、といった3つのパートを連関させ、上記課題の達成を目指した。 最終年度である令和元年度においては、「担持Auナノ粒子触媒および亜鉛助触媒による第三級アミンの特異な位置選択的α-アルキニル化」を確立した。 第三級アミンの酸化的α位官能基化では、一般に一電子移動および脱プロトンを伴うアミン酸化を経るため、メチル基選択的に官能基化が進行し、その選択性を逆転することは極めて困難である。本研究では、ナノ粒子触媒において一電子移動を伴わない特異な酸化が進行することを期待し、アミン酸化により生成するイミニウムカチオンへのアルキンの求核付加を経る第三級アミンの特異な位置選択的α-アルキニル化を目指した。以前開発したAuナノ粒子触媒によるα-酸素化反応を新たな角度から捉え直し、種々の担持Auナノ粒子触媒を析出沈殿法及び液相還元剤により調製した。TEM、XPS、XRD、ICP-AESなどにより、設計した触媒が調製できたことを確認した。種々の検討の結果、ヒドロキシアパタイト担持Auナノ粒子触媒 (Au/HAP) とZnBr2助触媒を用いることで、分子状酸素を酸化剤とした初の第三級アミンのメチレン基選択的α-アルキニル化に成功した。従来の手法では合成報告のない有用な新分子を多数合成できる汎用性の高い反応であり、将来必要不可欠な環境調和型の固体触媒による液相有機合成の普及に大きく貢献したと考えている。
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