研究課題/領域番号 |
17J08217
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
内田 圭祐 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | アライン / 炭素ー炭素結合切断 / Diels-Alder反応 / ベンゾシクロブテン |
研究実績の概要 |
トリフリルオキシ基を有するベンゾシクロブテノンの炭素-炭素結合切断を経るアライン発生法において、さまざまな反応条件で求核剤を作用させることで、カルボニル基を有するアラインの発生を試みた。その結果、多彩なリチウム反応剤やアルコキシドの導入に成功した。また、アラインと反応するアライノフィルに関して検討した結果、[2+2]、[2+3]、[2+4]反応が効率よく進行し、多彩な、α-アリールケトン類が得られることを明らかにした。さらに、この反応に関して詳細な解析を行い、反応機構について明らかにした。具体的には、ベンゾシクロブテノンに対して、低温下で求核剤を作用させ、途中で反応を停止させ、中間体の単離を行った。さらに、トリフリルオキシ基を有するベンゾシクロブテノールに対して塩基を作用させてアラインの発生が行えるか調査を行うことで、反応機構を明らかにした。 次に、ベンゾシクロブテノンに対して、後の変換に有用な、エノラートやアリル求核剤を用いる検討を行った。まず、調製したリチウムエノラートを用いて検討を行ったところ、炭素-炭素結合切断を経た目的物は全く得られなかった。これに対して、Lewis酸を用いてカルボニル基を活性化させ、求核剤との反応を行うことで、穏和な条件で炭素-炭素結合を形成できると考えた。すなわち、この手法によるベンゾシクロブテノール合成と、引き続く、弱い塩基を用いるアライン発生とその変換によって、高度に官能基化された芳香族化合物を合成できると期待した。種々の検討の結果、ベンゾシクロブテノンに対する向山アルドール反応や、細見・櫻井アリル化反応が、Lewis酸存在下で進行することを明らかにできた。さらに、ベンゾシクロブテノールに対して、塩基を作用させることで、アルコキシド中間体を経て、炭素-炭素結合切断によって生じたアラインの捕捉にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度において、期待を大きく上回る研究成果を挙げた。具体的には、(1)トリフリルオキシ基を有するベンゾシクロブテノンの炭素-炭素結合切断を経るアライン発生法において、リチウム反応剤やアルコキシドなどの求核剤を作用させることで、カルボニル基を有するアラインの発生に成功した。さらに、(2)炭素-炭素結合切断を経るアライン発生法において、アラインと反応するアライノフィルに関して検討した結果、[2+2]、[2+3]、[2+4]反応が効率よく進行し、医薬品などに多く見られる、多彩なα-アリールケトン類を簡便合成できることを明らかにした。さらに、この反応に関するコントロール実験により、反応機構を明らかにできた。これらの成果は、第111回有機合成化学シンポジウムやドイツで開催された国際シンポジウム26th ISHCにおいて発表した。とくに、ドイツで行われた26th ISHCにおいて高く評価され、Thieme Chemistry Poster Prizeを受賞したことからも、得られた成果のインパクトの高さは明らかである。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に確立できた反応条件を基盤に、実際に既存の医薬品を複雑化し、化合物ライブラリーを構築する。たとえば、対応するアライン前駆体、ケテンシリルアセタールを選択し、金属アミドを求核剤、スルフィルイミンをアライノフィルとして用いるスルベニシンナトリウム誘導体合成をはじめとする、さまざまな医薬品の構造を修飾した新しい化合物ライブラリーの構築に取り組む。さらに、本手法で合成できるα-アリールカルボニル化合物から、ヘテロ芳香環を有する多置換ビアリール化合物の合成へと展開する。
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