研究課題/領域番号 |
17J08234
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 雅大 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 感度向上 |
研究実績の概要 |
LHC-ATLAS実験における、トップクォーク対共鳴の探索を行なった。予言される新粒子はトップクォーク対への崩壊分岐比が、他の粒子への崩壊分岐比より高い場合が多く、新粒子が発見される確率が最も高いチャンネルの一つである。私はさらに、一方のトップがレプトン、ニュートリノ、bクォークに崩壊し、もう一方が3つのクォークに崩壊するチャンネルに着目して研究を行った。このチャンネルは、トップクォーク対共鳴探索において、新粒子の発見確率が最も高いチャンネルである。 主な背景事象は非共鳴トップクォーク対生成事象であるため、信号事象との区別は非常に難しい。トップクォーク対の不変質量分布を観察すると、背景事象は不変質量が大きくなるにつれてイベント数は指数関数的に減少する。一方、信号事象は不変質量が大きい領域において、質量ピークを持つ。そこで、不変質量が大きい領域において、より多くの信号事象を残せるように事象選別条件を変更し、信号事象の検出感度を向上することを目的に研究を行った。主な取り組みとして、使用するトリガーの見直しや、bクォーク由来のジェットを識別する際の条件の最適化を行った。これらのアイデアを現行の解析に追加することにより、シグナルとバックグラウンドの区別能力、さらに新粒子の発見感度が向上することを確認した。 またミューオントリガーシステムの専門家として、実験稼働中もシステムの状況を常にチェックし、問題が生じた場合は迅速な対応を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーションサンプルを用いた研究によって、いくつかのアイデアが新粒子の感度向上につながることが確認できた。これに基づき今後の研究方針をある程度固めることができた。また新しく取得されたデータを見始めることができ、今年度の研究を進めていく上で良いスタートが切れたと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは高エネルギー素粒子加速器実験の一つであるLHC・ATLAS実験において、余剰次元模型などで予言される重い新粒子の探索をすることで、標準理論を超えた理論の検証を行ってきた。しかしこの探索を含め、LHCで取得されたデータを用いて行われた解析において、現在のところ標準理論を超えた理論の兆候は得られていない。そこで私は、高エネルギー素粒子加速器を用いたLHC・ATLAS実験から、水チェレンコフ型検出器を用いたスーパーカミオカンデ実験へと方法を変えて、引き続き標準理論を超えた理論の検証を行うことにした。 本研究では、スーパーカミオカンデ実験において取得されたデータを解析することで、陽子崩壊事象の探索を行う。スーパーカミオカンデは2018年6月よりアップグレード期間に入るため、それまでに取得された全データを用いて解析を行い、陽子崩壊事象の発見を目指す。兆候が得られなかった場合も、陽子の寿命に対して、これまでで最も厳しい下限をつけることを狙う。また実験稼働中は現地に滞在し、システムの管理や取得データのモニタリング等を行い、実験が安定して稼働するように尽力する。またアップグレード期間中も、新しいシステムの建設作業に積極的に参加する。本研究の解析結果を博士論文としてまとめるとともに、学術論文として投稿・出版する。さらに研究結果を国際学会や日本物理学会等で報告する。
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