研究課題
今年度は極微細熱電発電Siナノワイヤデバイスに対する極微小領域の温度分布評価実現のため、オペランド用ラマン分光器の設計を主に取り組んだ。具体的には温調プローバを用いてSiナノワイヤ内に局所的な温度勾配をつくり、ラマン測定から得られるSiのストークス、アンチストークスラマン散乱の強度比を測定する手法を確立することが目的である。ラマン分光法で得られるストークス、アンチストークスラマン散乱の強度比を算出することで、Siナノワイヤ内の温度を高空間分解能、非破壊かつ高精度に測定することが出来る。はじめにSiナノワイヤ内に温度勾配をつくるため、オペランドラマン分光器用の温調プローバを設計および開発を行った。またそれに伴い、対物レンズの設置位置やワーキングディスタンス、およびサンプルステージを考慮しつつ開発を試みた。高精度に温度分布を評価するためには、Siのストークス・アンチストークスラマン散乱スペクトルを正確に測定することが重要となる。そこで、Siのストークス・アンチストークスラマンスペクトルを高精度に取得するため、ストークス・アンチストークスラマン散乱を同時測定できるようにレイリー散乱を考慮しつつ、グレーティングと光学系を設計した。また分子動力学(MD)法によるSiナノワイヤのフォノン輸送シミュレーションも実施し、Siナノワイヤの寸法によって温度分布、熱伝導率がどのように影響するか評価した。今後はオペランドラマン分光器を用いた測定条件の最適化を行う予定である。また、実際に寸法を変えたSiナノワイヤに対し、オペランドラマン分光法により温度分布を取得し、熱電発電Siナノワイヤプロセスにフィードバックを行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請書記載の「研究目的」の一つである"Siナノワイヤのオペランド計測技術開発と熱伝導率評価"達成のためにオペランド用ラマン分光器の設計に取り組んだ。当初の目的通り、Siナノワイヤ内に温度勾配を作るための温調プローバをラマン分光器用に設計した。また、Siナノワイヤの寸法を考慮しつつラマン分光器の対物レンズの設置位置、ワーキングディスタンス、およびサンプルステージを考慮しつつ開発に取り組んだ。ラマン分光法による局所領域の温度測定にはストークス・アンチストークスラマン散乱の強度比が必要で高精度なラマンスペクトル測定が必須となる。そのため、ラマン分光器のグレーティングも考慮し、ストークス・アンチストークスラマン散乱の同時測定を実現するよう光学系も検討した。今後、オペランドラマン分光器の設計を完了次第、Siナノワイヤ内の温度分布を非破壊・高精度で算出することを考慮すると、順調な進捗状況であると言える。
今後の方針として、オペランド計測用のラマン分光器の調整を行い、測定条件の最適化とSiナノワイヤの温度分布を評価する。実験的に求めたSiナノワイヤの温度分布からワイヤ幅、ワイヤ長、そして金属コンタクト・不純物濃度等のナノワイヤデザイン最適化を行う予定である。また、ナノワイヤの形状確認、組成分析は電子顕微鏡(SEM、TEM)を用い、ラマン測定と共にSiナノワイヤ作製にフィードバックを行い、今後の高効率極微細熱電発電Siナノワイヤデバイス開発の指針を与える。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 56 ページ: 06GG10 (1-5)
10.7567/JJAP.56.06GG10
巻: 56 ページ: 110313 (1-4)
10.7567/JJAP.56.110313
Journal of Applied Physics
巻: 122 ページ: 144305 (1-7)
10.1063/1.4999195
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 16549 (1-8)
10.1038/s41598-017-16724-4