研究課題
今年度は極微細熱電発電Siナノワイヤデバイス実現のため、ラマン分光法によるSiナノワイヤデバイスプロセスと熱伝導特性の評価を中心に取り組んだ。Siナノワイヤを各プロセスで熱酸化、イオン照射、結晶回復熱処理の3段階に区切って作製し、熱伝導特性はUVラマン分光法を用いて酸化膜被覆Siナノワイヤのレーザパワー依存性を測定して評価を試みた。温度に対するSiのラマンシフト(光学フォノンモード)の変化率は一定であることが過去の文献で報告されており、この関係を用いて温度算出を行った。結果、酸化膜形成後アルゴンイオン照射処理を行ったSiナノワイヤが、レーザによる温度上昇が顕著に抑制されていることが明らかになった。更に、アルゴンイオン照射後に結晶回復熱処理を行ってもレーザによる温度上昇の度合はアルゴンイオン照射処理を行った試料と比較しても変化がないことが判明し、イオン照射がSiナノワイヤの熱伝導特性を大きく変化させるプロセスであることが判明した。言い換えれば、熱酸化膜形成はSiナノワイヤの熱伝導率を顕著に低くするプロセスであると考えられる。以上本研究から熱電発電Siナノワイヤデバイスを作製する際、熱酸化膜形成プロセスは特に重要であり、SiO2/Si界面はSiナノワイヤの熱伝導率を決定する要因の一つであることが実測的に明らかになった。今後、上記の結果を参考にしつつ高効率極微細熱電発電Siナノワイヤデバイスのプロセスにフィードバックを行い、熱伝導率含めて最適化を行う予定である。更に極微細熱熱電発電Siナノワイヤデバイスに対する極微小領域の温度分布評価実現のため、オペランドラマン分光法の開発にも取り組んだ。試料に局所的な温度勾配をつくることを目的として作製した温調プローバをラマン分光器に搭載することで、ラマン測定で得られるフォノン情報を元にSiの温度計測を試みた。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は極微細熱電発電Siナノワイヤデバイス実現のため、Siナノワイヤプロセスに応じて熱伝導特性がどのように変化するかラマン分光法のレーザパワー依存性から評価を行い、プロセス最適化を試みた。結果、酸化膜形成後のアルゴンイオン照射プロセスを行ったSiナノワイヤが、レーザによる温度上昇が顕著に抑制されていることを明らかになり、ラマン分光法を用いてSiナノワイヤの局所的な温度評価に成功した。またアルゴンイオン照射後結晶回復熱処理を行っても、温度上昇の度合が変化していないことも判明し、これらの結果は高効率極微細熱電発電Siナノワイヤデバイスプロセス確立へ向け、概ね順調であると考える。更にオペランドラマン分光法の開発および実測にも今年度着手した。先行研究で報告されているラマンシフトと温度の関係式と組み合わせ、Siナノワイヤデバイス微小領域で温度分布が測定できるか検討を行っており、以上を総合して順調な進捗状況であると言える。
温調プローバを搭載したオペランド測定用のラマン分光器で、熱電発電Siナノワイヤデバイス内に局所的に与えられた温度勾配を測定し、Siナノワイヤのデザイン最適化を実施する予定である。Siナノワイヤの幅、長さ等のデザイン最適化を検討し、更に熱伝導層から急峻な温度勾配が形成されているかチェックを行う。温度評価には先行研究で報告されているラマンシフトと温度の関係式、もしくはストークス・アンチストークスラマン散乱の強度比を用いて算出する予定である。更に実際にデバイスから得られる熱電発電効率を測定し、ラマン分光法によるオペランド計測、フォノン輸送シミュレーションと相関性があるかを詳細に評価し熱電デバイスプロセス最適化を行う。
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