本研究は、打動作の1つであるゴルフスイング動作に着目し、複合的な体幹部の回転運動において、パフォーマンス向上に影響する動作戦略とその動作を可能にする筋形態を解明することを目的としている。最終年度は過去2年の研究結果に加えてスイング動作解析を行い、パフォーマンス(クラブヘッドスピード:CHS)に影響する体幹部の動作戦略と筋形態を検討した。 ゴルフ選手の体幹部はダウンスイング(DS)中に右側屈と左回旋動作を行っていた。また右方向への側屈角速度は、その最大値に対するインパクト時の減少率が小さいほどCHSが速かった。ゴルフ選手はDS後半にかけて体幹部の角運動量を大きくさせ、インパクトまで維持することでクラブを加速させている(前年度研究)。そして、ゴルフ選手の右側の脊柱起立筋はCHSに影響する要素として選択されており(一昨年度研究)、右方向への側屈に作用する。以上により、右側の脊柱起立筋が体幹部の右側屈動作に作用し、角速度の減少を抑えることで、体幹部の角運動量の維持に貢献していると考えられる。 加えてゴルフ選手の股関節はDS中に左側は屈曲、右側は伸展動作を行っていた。先行研究によりDS前半の股関節トルク(左:屈曲、右:伸展)が体幹部のスイング方向への回転動作に貢献していることが報告されている。同側の股関節の屈曲に作用する大腰筋は、ゴルフ選手では左側が右側よりも大きいことが速いCHSの獲得に関係する(一昨年度研究)。以上により、左側の大腰筋が左股関節の屈曲動作に作用することで、体幹部の回転動作に貢献し、体幹部に角運動量を転移させる役割を担っていると考えられる。 従って、ゴルフ選手はDS中に外的モーメントを下肢から体幹部へ送り、継続的に体幹部が大きな角運動量を得ることでクラブを加速させていること、および右側の脊柱起立筋の筋量と大腰筋の左右差率(左>右)は、CHSに影響することが示唆された。
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