本研究は、乳児と養育者が、日常場面においてどのような相互作用をおこなっているのかを調べ、その相互作用経験が乳児と養育者双方の認知や行動の変化にどのように影響しているのかを実験室実験によって調べることを目的としている。今年度は採用年度1年目であり、研究環境の整備に注力した。まず、本研究課題のメインであるウェアラブルセンサの選定をおこなった。結論としては、「日常場面」および「乳幼児」が対象であるという点で適切なセンサを選ぶことが難しく、当初の予定よりも大幅に時間がかかっている。 まだサンプルサイズが小さいため統計的解析には時期尚早であるが、音声データと心拍データの概観から、親子の音声でのやり取りの頻度が乳幼児の心拍変動を抑える傾向があることが分かった。この結果は、親子間の音声やり取りの頻度が乳幼児の注意や学習に関連する可能性を示唆する。今後はサンプルを増やすとともに、実験室実験でのデータや言語発達の指標なども加えた縦断研究をおこない、日常場面における音声やり取りと乳幼児(および養育者)の認知の変化や言語発達との関連についても検討する。 今後は、上で挙げたウェアラブルセンサの諸課題を解決すべく、さらなる選定とデータ収集をおこなう予定である。特に、日常的に身につけるものなので、協力者にとっての負担の少なさという点から新たなセンサを検討したい。 なお、就職により、本研究課題は今年度で終了となる。しかし、新しい職場においても本テーマでの研究を続ける予定であり、本研究課題の受入研究者であった開一夫教授(東京大学)にも協力を仰ぎつつ、次の段階に進みたいと考えている。
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