研究課題/領域番号 |
17J08259
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
都地 裕樹 明治大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | 社交不安症 / 他者視線 / 事象関連電位 / 電流源推定 / 島皮質 / 表情 / 否定的解釈 |
研究実績の概要 |
今年度は自身に向けられた他者の視線を脅威として知覚する脳部位の同定,感情を含む他者視線に社交不安傾向がもたらす認知バイアスを中心に研究しその成果を論文にまとめた. 他者視線認知に関わる高次脳機能に社交不安傾向があたえる影響を調査した.具体的には,他者の直視,よそ見,閉眼を観察した際の事象関連電位に着目した.その結果,他者視線を観察した際,正中前頭部で惹起する事象関連電位P2に社交不安傾向の影響が見られた。高社交不安傾向者は低社交不安傾向者に比べP2の振幅が大きかった.高社交不安傾向者は直視,よそ見,閉眼の順でP2が惹起するのに対して,低社交不安傾向者は直視,よそ見に差がなく,次いで閉眼の順でP2が惹起した.また,P2の電流源推定を行ったところ,高社交不安傾向者は低社交不安傾向者に比べて,他者直視を観察している際,右島皮質が強く活動することがわかった.これらのことから,他者視線,とりわけ他者直視は高社交不安傾向者にとって不安を想起させる優先的に処理すべき顕著な刺激として認知されている可能性が示唆される.以上のことをまとめた論文が国際雑誌に掲載された. 次に,感情を含む他者視線に社交不安傾向がもたらす認知バイアスについて調査した.パラメトリックに変化させた感情を含む他者視線画像を呈示したときに抱く印象に,社交不安傾向があたえる影響について行動実験により調査した.その結果,高社交不安傾向者はあいまいな幸せの表情から,低社交不安傾向者はあいまいな嫌悪の表情から明確な嫌悪の表情にかけてネガティブな印象を抱くことが明らかとなった.また,明確な幸せの表情に対するネガティブな印象は社交不安傾向が低いほど強くなることが明らかになった.これらのことから,他者視線に含まれる感情があいまいであるとき,高社交不安傾向者は不安を増長し,否定的な解釈をすることでネガティブな印象を抱く可能性が示唆される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の年次計画通りに研究を遂行している.具体的には課題①,課題②-1,博士論文の執筆を手がけた. 課題① 自身に向けられた他者の視線を脅威として知覚する脳部位の同定,については学術論文として国際雑誌(Brain and Cognition)に掲載された. 課題②-1:感情を含む他者の視線に抱く感情に社交不安傾向が与える影響を調査した。得られた成果は学会(Society for Neuroscience, 日本認知科学会研究分科会P&P研究会)で発表した。なお,この発表に基づいた論文は現在投稿準備中である. これまでの研究と合わせ,「他者視線認知に社交不安傾向の与える影響に関する脳機能計測研究」と題して博士論文を執筆し明治大学にて博士(工学)を取得した.
|
今後の研究の推進方策 |
課題2-2:社交不安傾向者が抱く他者の直視に対する脅威が,直前の感情が含まれる他者の視線に よる影響を受けるか調査する. 課題3:課題1,課題2の結果をとりまとめ,社交不安傾向者が抱く脅威を評価するバイオマーカーの開発の提案を行う. 申請者と交流を持つ精神疾患関係の医療従事者と積極的に連絡を取り課題の解明に努める.
|