研究課題
最終年度では、発見した(微)生物と金属のまったく新しい接点を拡げていくことに注力した。現在に至るまで、その接点は生物毒性あるいは無毒性に限定され、正の影響は皆無に等しいと考えられてきた。そうした中、レアアースの中でも産業上重要なディスプロシウム(Dy)がバチルス属に属する巨大菌の代謝に正の影響をもたらすという発見は、学術的な意義に留まらない可能性を秘めている。この新奇微生物応答は、具体的には対数増殖期における細胞増殖速度の促進とポリγグルタミン酸(PGA)産生の増産であった。同じくバチルス属の納豆菌では該応答が認められていないことから、両者のPGA合成オペロンとその近傍の配列を比較し、近傍配列中に顕著な違いを見いだした。納豆菌にはない、広域転写制御因子DegU認識配列が巨大菌には備わっていた。該認識配列を含む領域を計算化学的に解析したところ、数塩基の増減でその構造を激しく変化させるリボスイッチモチーフの存在が示唆された。実際に二次構造形成の有無を調査するため、PCR法の原理に着目した。二本鎖DNAの変性からアニーリングに至る段階で、鋳型一本鎖DNA分子内での二次構造形成がプライマーDNAの結合より早い場合を仮定し、PCR産物量の減衰を指標とする阻害PCR法を案出した。結果、該配列に結合するDNAプライマーでは正常増幅に比して30%程度であったのに対し、該配列部分から-5nt(塩基)離れた下流に結合するDNAプライマーでは増幅に問題なかった。そのため、計算化学的に予測された二次構造が高い確立で存在しうるとの結論に達した。次いで、ランタノイドとMnを対象とした阻害PCRを試みた。結果、ランタノイドに代表されるランタンや二価金属のMnではPCR産物の増幅率が制限される一方、興味深いことにDyでは濃度依存的な増幅率の回復が認められた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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DNA repair
巻: 75 ページ: 29-38
https://doi.org/10.1016/j.dnarep.2019.01.005