研究課題
前年度、卵細胞において準備されたTALE型ホメオドメイン転写因子MpKNOX1が、受精を機に一過的に核移行することにより、雌雄前核の融合およびその後の胚発生を制御するということを見出した。しかしながら、MpKNOX1の核移行がどのように制御されているかは未解明であった。他のモデル生物における知見から、別のTALEホメオドメイン転写因子であるBELLが雄性配偶子から供給され、MpKNOX1を核移行させるという仮説を立て、本年度はこれを検証した。公開されているトランスクリプトームデータを探索したところ、MpBELL3およびMpBELL4の2つの遺伝子が雄性生殖器官特異的に発現していることを見出した。これらのMpBELL遺伝子の機能を解析したところ、雄性配偶子由来のMpBELL3/4がMpKNOX1の核移行を介して雌雄前核の融合およびその後の胚発生に寄与すると示唆された。これらの研究成果によりゼニゴケにおいてKNOX-BELLは受精時に胚発生を開始させる機能を持つことが明らかとなった。緑藻クラミドモナスではKNOX-BELLが、ゼニゴケと同様に受精直後の接合子特異的な遺伝子発現の開始に機能することが知られている。これらのことから、KNOX-BELLの受精時の機能は緑色植物に広く保存されたものであることが示唆される。一方で、被子植物においてKNOX-BELLは受精後の胞子体発生制御に機能しており、このことから陸上植物進化の過程でKNOX-BELLの機能が変遷していったと考えられる。以上のように本研究成果は、緑色植物に広く保存されたTALE型転写因子の機能の進化過程に関して重要な知見をもたらした。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Plants
巻: 5 ページ: 663~669
doi: 10.1038/s41477-019-0466-0