研究課題
アミドは比較的安定な官能基であり、他の官能基を維持したまま選択的に変換することは困難である。選択的に官能基化する方法として無水トリフラートとピリジン類を用いたピリジニウム塩中間体を経る変換法が開発されており、その特異な反応性を利用した化学変換反応は精力的に研究されている。私はピリジン類のカチオンリレーを利用した官能基選択的反応の開発研究の応用として、アミドに由来するピリジニウム塩中間体に着目し、新規求核種導入反応の開発を目指した。すなわち、アミドに対して無水トリフラートと2-ヨードピリジンを添加した後、電子豊富な1,3,5-トリメトキシベンゼンを加えるとフリーデル・クラフツ型の反応が進行してイミニウム塩中間体に変換された。この変換反応は無水トリフラートと2-ハロピリジンを共存させると効率よく進行した。2-ハロピリジンに代えて、無置換のピリジンやDMAPあるいは無機塩基などを添加しても反応はほとんど進行しない。基質適用範囲は広く、様々な官能基を有するアミドをイミニウム塩中間体に変換できる。また、トリメトキシベンゼン以外にもインドール誘導体を求核種として導入することもできた。興味深いことにこのイミニウム塩は水などに対して安定で容易に単離できる。単離されたイミニウム塩は、メタノール溶媒中で水素化ホウ素ナトリウムを反応させると、イミニウムカチオン部位の還元が速やかに進行して対応する第三級ベンジルアミンに90%以上の高効率で変換された。化学的に安定な官能基であるアミド基をターゲットとして、本来不安定なイミニウム塩化合物を単離した先例は無く学術的価値が高い。さらに得られたイミニウム塩はヒドリド還元で容易に第三級ベンジルアミン類へと変換できるため、新しい分子変換法として有用である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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ACS Omega
巻: 4 ページ: 11522-11531
10.1021/acsomega.9b01130