研究課題/領域番号 |
17J08626
|
研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
森野 善明 日本工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | Massive MIMO / アクセス制御 / マルチビーム / オーバヘッド |
研究実績の概要 |
本研究課題は,CSI(Channel State Information)手順を削減可能なマルチビームMassive MIMO技術と呼ばれる物理層の技術と,MAC(Medium Access Control)層における高効率なアクセス制御を融合したものであり,採用第1年目では,特にMAC層における評価を中心に進めた. 研究を実施するにあたって,昨年度まで検討を行っていた提案技術のベースプロトコルの見直しを行った.これまでのベースプロトコルでは,従来技術とのバックヤードコンパチビリティをとるために,従来と同様のフレーム構成やパラメータを使用することとしていた.しかしながら,本システムは,既存技術の課題であるオーバヘッドを削減し,高効率な通信を新しい技術であるMassive MIMO伝送で実現するのが第一であると考え,フレーム構成を変更し,さらなるオーバヘッドの削減を目指した. また,マルチビームMassive MIMO技術は,同一時間に同時に送受信ができないことから,時分割による制御とし,物理層を考慮した.これらの検討は,計算機シミュレーションに実装し,評価を行った.その結果,90%以上の高い伝送効率が得られることを確認した. 基礎検討終了後,同一ビーム内に複数のユーザが存在する場合,通信対象に選ばれず通信が行えないというマルチビームMassive MIMO伝送の課題を解決するために,MAC層におけるユーザ選択手法の検討を行った.本検討は,基地局が各ビーム内の端末数などの情報を既知であることを利用し,通信対象に選ばれないビームのユーザを救済可能である.これによって,物理層の課題をMAC層の制御で解決でき,公平的な通信が行えるようになる.ユーザ選択手法を用いることによって約1.8倍スループットが向上することを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の年次計画であったアクセス制御方式の見直しを行い,トラヒック量と伝搬損失の変化に対して評価が行える計算機シミュレーションツールの構築を行った.これにより,さまざまなネットワーク環境における検討および評価を行えるようにした.さらに,提案方式の効果を視覚的に確認するため,映像サーバから映像を流し,計算機シミュレーションで疑似的に送信を行うことで,映像などの遅延や乱れなどを確認できるシステムを構築した.提案方式と比較を行うため,IEEE 802.11ac規格のMU-MIMOについても評価を行い,提案方式の有効性を示した.また,提案方式における公平性を確認するため,ユーザ選択手法を検討し,ベースの提案方式と比較を行い,高い効果が得られ,有効性も確認した. 該当年度における研究成果は,筆頭として,国内学会6件,査読付き国際会議2件として発表を行い,現在,これらの技術をまとめた査読付き学術論文を執筆中である. 以上のことから,当初の計画以上に進展したといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,物理層とMAC層の双方を考慮し,1つのシステムとして検討および評価を行い,本研究の総まとめとする.これまで,MAC層を中心に検討を進めてきた提案方式を物理層の技術とすり合わせ,実現性の高い技術として確立させる.また,必然的にトラヒック量が多くなるダウンリンクに焦点をあてて評価を行ってきたが,アップリンクの公平性も考慮し,最適な通信時間の割り当ての検討を進める.さらに,現在のネットワーク環境に即したパラメータを検討し,実環境においても高い効果が得られることを示す. 以上の検討から得られた成果は,随時,国内の研究会や査読付き国際会議において発表を行い,有効性を示すとともに,多くのコメントをいただき,最終的に物理層とMAC層を総合したクロスレイヤ技術として査読付き学術論文としてまとめる.
|