研究課題/領域番号 |
17J08718
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
金友 拓哉 東京理科大学, 理学部 第一部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 分子磁性 / 希土類 / 有機ラジカル / 4f-2p系化合物 |
研究実績の概要 |
本研究は、高次元性かつ高スピン状態を有した希土類―ラジカル錯体の開発を目的とする。本年度は、高次元構造を形成し得る常磁性配位子の合成およびその配位子を用いた希土類錯体の開発を目指した。 はじめに、1つの分子に複数の配位可能なラジカル部位を有した新奇ビラジカル化合物を合成した。この化合物には、希土類―ラジカル間の磁気的相互作用が強磁性的になる局所的な分子設計を組み込んだ。単結晶X線構造解析と磁気測定より、分子内および分子間に働く磁気的相互作用をそれぞれ明らかにした。 次に、合成したビラジカル化合物を用いて希土類イオン (GdおよびYイオン) と錯形成を試みた。得られた錯体は、構造解析より、ビラジカル化合物が有する2つのラジカル部位がそれぞれ希土類イオンに配位した1次元鎖構造であった。磁気測定より、Gdイオンとラジカル化合物間には強磁性的相互作用が働くことを明らかにした。この相互作用と結晶構造より、今回合成した希土類―ビラジカル化合物は高スピン1次元鎖化合物であることがわかった。この結果より、ラジカル化合物を用いた希土類錯体におけるスピン状態と分子構造や次元性を同時に制御する設計指針の確立が期待できる。 また、ビラジカル化合物だけではなく既知のトリラジカル化合物を用いて希土類イオンとの錯形成を試みた。構造解析より、環状と直鎖が交互に連なる1次元鎖構造であることがわかっている。この独特な構造様式は大変興味深く、現在、詳細な調査を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主目的である”高次元性かつ高スピン状態を有した希土類―ラジカル錯体の開発”を達成することができた。合成した新奇ビラジカル化合物は結晶構造に基づく計算化学と磁気測定の両面から分子内基底三重項が支持された。そのラジカル化合物を用いた希土類錯体は、結晶構造より、一次元鎖構造を示した。また、磁気測定より、高スピン状態を示すことがわかった。また、既知のトリラジカル化合物を用いた希土類錯体では特異的な一次元鎖構造を示すことがわかった。これらのことから、現在までの進捗状況は当初の研究目標に即して順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究では、ビラジカルおよびトリラジカル化合物を用いて、希土類―ラジカル間の局所的な分子設計を保持したまま、独自の1次元性化合物を開発した。今後は、希土類イオンを強い磁気異方性を示すTbやDyイオンに置き換えて磁石としての性能を調査する。また、独自の1次元構造を示した希土類―トリラジカル化合物について、対アニオンや置換基の導入など構造と磁性の相関について調査を進める。
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