本研究課題「『時間の社会学的な時間化』のプログラム――ニクラス・ルーマンの多元的な時間論から」の実施3年度目である平成31年度(令和1年度)は、2年度目までの研究でルーマンの時間論の重要な構成要素として明らかになった「非同時的なものの同時性」の考えと、ルーマン自身が十分に検討しなかった「作動時間」と「観察時間」の区別について、研究成果のまとめを行った。まず、「非同時的なものの同時性」に関しては、美術史や歴史学、知識社会学以来の当該概念の概念史・学説史研究である「『非同時的なものの同時性』――社会学における同時性の問題について」を社会学の専門誌に投稿中である。「作動時間」と「観察時間」の区別に関しては、後期のルーマンによる「メディアと形式の区別によるコミュニケーション・メディア」の理論をもとに、「コミュニケーション・メディアとしての時間」という考えに発展させ、下記に挙げる第92回日本社会学会大会で「時間のメディアと形式――ニクラス・ルーマンのコミュニケーション・メディ ア論から考える社会的時間」の報告を行い、『社会学雑誌』37号で「ニクラス・ルーマンの時間論」公刊を予定している。また、ルーマンの時間論を基礎として、より一般的に「時間の社会学」について論じた論考として、「社会の時間と個人の時間――時間の社会学」を共編著の社会学テキストで公刊する予定である。併せて、ルーマンらの諸論考が公刊されてきた『ケルン社会学・社会心理学雑誌』に関する、ドイツ語圏の社会学理論・観念史の専門家であるシュテファン・メビウス(社会学理論・観念史)の論考の翻訳続稿を公刊した。
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