研究実績の概要 |
本研究では主として、カチオン性ロジウム触媒を用いた位置およびエナンチオ選択的な[2+2+2]付加環化反応によるキラルカーボンナノベルト(CNB)の不斉合成を検討した。 (1)テトラインと環状ジエンとの位置およびエナンチオ選択的な[2+2+2]付加環化反応を鍵とするキラルCNBの合成 上記(1)において、モデル化合物として多環式芳香族炭化水素(PAH)およびアルキル鎖をテザーとして有するキラルシクロファンの不斉合成に取り組んだ。その結果、カチオン性ロジウム(I)/(R)-xyl-Segphos錯体触媒を用いることで、ジインとベンゾフルベンとがさまざまな長さおよび種類のアルキル鎖を介して結合した分子の[2+2+2]付加環化反応が進行し、対応するキラル大環状分子が高収率かつ完全な位置およびエナンチオ選択性にて得られた。さらに、得られたキラル大環状分子を用い、DDQおよび塩化ルテニウム一水和物/過ヨウ素酸ナトリウムによるシクロヘキサジエン部分の酸化的芳香族化によって、その光学純度(>99% ee)を損なうことなく、良好な収率にて目的のPAHを有するキラルシクロファンの合成を達成した。また得られたキラルシクロファンは、水素化ホウ素ナトリウムによってカルボニル基の1,2-還元がジアステレオ選択的に進行し、対応するπ 拡張フルオレンを有するキラルシクロファンへと良好な収率にて変換することができた。さらに、得られたキラルシクロファンの光学特性を測定した結果、その蛍光量子収率は78-82%と、これまで報告されているPAHを有するキラルシクロファンに比べて高い値であることを明らかにした。興味深いことに、本キラルシクロファンはいずれも、シクロファン化していないモデル化合物に比べて蛍光量子収率の値が極めて高く、この傾向は、これまで報告されているPAHを有するキラルシクロファンとは反対の結果であった。
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