研究課題/領域番号 |
17J08813
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
藤井 真一 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 紛争解決 / 真実和解委員会 / ソロモン諸島 / ガダルカナル島 / 贈与交換 / 貝貨 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、平和的な社会関係の構築や維持・再生産に果たす贈与交換の働き(特にモノの役割)に注目しながら、「民族紛争」中のソロモン諸島ガダルカナル島民の生活戦略と紛争後の日常生活を解明することである。計画1年目にあたる2017年度は、主に、ガダルカナル島北東部における紛争中の島内避難と紛争への積極関与の実態を明らかにするための臨地調査と、社会関係の構築を媒介するモノについての臨地調査を実施し、下記の成果を得た。 (1)ガダルカナル島北東部において、紛争渦中における村落部での個人的な加害・被害経験の聞き取り調査を行なった。この調査から、紛争渦中における国内避難行動と生活実態の詳細に関する口述資料が集積できた。また、「民族紛争」へと積極的に関与したガダルカナル島北東部出身の元戦闘員の紛争渦中における活動実態について新たな口述資料を得た。 (2)ガダルカナル島において、紛争解決のみならず婚姻儀礼の際にも用いられる貝貨の製作に携わることで、貝貨の製作と使用に関する民族誌資料を得た。この調査から、集団間関係の構築や修復が顕著となる非日常的な局面において、貝貨というモノがどのように社会関係を操作するのかについての口述資料を収集した。 (3)国家統合・和解・平和省の職員に対して、紛争後の社会再構築過程における国家レベルでの関係修復の取り組みに関する聞き取り調査を行ない、2010年から2012年に活動した真実和解委員会に対する当事者たちの事後評価と、2017年までに執り行われた和解儀礼の事例に関する資料を得た。 (4)真実和解委員会が実施した和平活動とガダルカナル島における在来の紛争処理との間にみられる緊張関係について、日本文化人類学会の研究大会において口頭発表を行なった。この口頭発表での分析と、2017年度の臨地調査から得られた資料を総合し、『文化人類学』に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、ガダルカナル島北東部における民族誌調査を実施し、紛争渦中および紛争後の現地住民の日常生活に関する口述資料の集積ができた。また、紛争解決に果たすモノの役割を考察するにあたり、ガダルカナル島で用いられる貝貨の製作に携わったことで、貝貨の製作・使用をめぐる背景や実態についての資料を収集できた。 さらに、採用以前から継続してきた紛争解決の研究と2017年度の臨地調査で収集した資料を踏まえ、紛争処理をめぐる地域間比較研究についての学会誌特集を実現したことから、成果公開も順調に進められたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定の研究計画に則って、ガダルカナル島西部および南部における臨地調査を実施する。これにより、ガダルカナル島全域における「民族紛争」の背景ならびに各地域住民の紛争認識を描き出し、マライタ側の先行研究の蓄積と総合して、ソロモン諸島における「民族紛争」の包括的理解を目指す。
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