研究課題/領域番号 |
17J08863
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉川 聡一 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 二酸化炭素の電気化学還元 / 銀カソード / オゾン酸化処理 |
研究実績の概要 |
本研究課題の通り,『高効率な光電変換特性を示す光アノード電極』,及び『低い印加電圧でCO2をCOへと還元するカソード電極』を組み合わせたCO2の光電気化学システムの構築を目指している.採用第二年度は,CO2の電気化学還元に活性を示すAg電極のCO生成活性の向上及び過電圧の低減に取り組んだ.その結果,Ag電極にO3処理を施すことで,COの生成速度が大幅に向上することを見出した.水中でのCO2の電気化学還元は,種々の金属基板上で検討されており,Agをカソードに用いるとCOの生成が報告されている.また,電気化学的な酸化再還元処理により,Ag電極のCO生成へのファラデー効率が向上し,還元電流密度が増大することが報告されている.要因として,電極の面特性や電子状態の変化が寄与していると考えられる.一方で,Ag板へのO3処理により,表面にAgOの酸化被膜を生じることが報告されており,これを再還元すると,電気化学的な酸化還元とは異なる面特性や電子状態の形成が期待される.そこで,O3雰囲気下で前処理したAg電極をカソード極に用い,CO2の電気化学還元を検討した.三電極式の電気化学セルを用い,-1.6 V vs. Ag/AgClの定電圧電解によりCO2の還元活性を評価した.電極の電気化学表面積(ECSA)の評価には,溶存のPb2+を金属表面に単分子層程度析出させるアンダーポテンシャル析出(UPD)法を用いた. O3処理により,CO生成へのファラデー効率が68%から95%へと大幅に向上した.また,O3処理により還元電流密度は3.2倍に向上した.一方,UPD法により析出した Pbのモル数,すなわちAg電極のECSAは,O3処理によりAg foilの2.1倍に増加した.以上から,O3処理による還元電流密度の増大は,ECSAの増加以外の要素が寄与していることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書に沿った進行を行っている.本課題が志向する二酸化炭素の光電気化学還元システムの構築には,低い過電圧で二酸化炭素の還元を駆動するカソード電極の開発が不可欠である.本年度の検討から,AgカソードによるCO生成電極の高活性化・低過電圧化に関する知見を得ている.また,第一年度に得た合金化による電極の構造・電子状態制御に関する設計指針からも,次年度における二酸化炭素の電気化学還元を低過電圧で駆動する電極触媒材料の開発が期待される. 以上のことから,現在までの進捗状況は,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
第二年度までに,AgカソードによるCO2の電気化学還元活性の大幅な向上を達成した.最適な電極表面の設計には,Ag電極の面特性や電子状態を明らかにすることが必須であり,COなどのプローブ分子を用いた電気化学的な手法から,その評価を進めている.また,Agをベースとした電極ではCOへの還元電流のオンセット電位が-1.2 V vs. Ag/AgCl (pH = 6.8, 以下も同様)程度であり、光アノードとして想定されるGa2O3系電極の伝導帯準位(-1.1 V vs. Ag/AgCl)では,十分な励起電子のポテンシャルエネルギーが得られない.第三年度においては,より低い過電圧で駆動するCO2の還元カソードの開発を志向し,異種金属元素との合金化により電子表面の電子状態制御に取り組む所存である,また,第一年度に推進した,表面修飾したGa2O3系光電極と組み合わせることで,効率的なCO2の光電気化学システムを構築する.
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