超スマート社会において、再エネを無駄なく利用するために、配電側と需要側の運用戦略による経済的かつ技術的利益の創出を目標とした。細分化した需要家から数千戸までを対象とし、様々な観点から配電系統の運用方法と需要家側の消費形態について下記の3つの側面から研究に取り組み、成果を得た。 1.負荷需要応答(以下、DR)のサービス内容の提案と最適運用方法(配電側と需要家側の戦略の均衡点算出)による相互利益の創出を確認した。有効電力に関するDRと無効電力が影響を及ぼす電圧維持に関するDRをサービス内容として,需要家の無理ない参加(実際の電力消費に影響を及ぼさないこと)を提案し,DR内容の有用性を定量的に評価した。 2.需要家の多様な運用と意思決定に着目した研究を行った。その際,地産地消型のスマートハウスやEVによる電力融通による災害時運用と再エネの有効活用方法について議論した。意思決定のために快適度の概念を導入することで,多目的最適化問題を定式化し,数値解析に基づく多様な需要計画を提供できることを確認した。また、低価格シングルボードコンピュータによるHEMSの作成を行った。 3.再エネ導入に伴う三相不平衡問題に着目し,再エネを配電系統へ連系するための単相インバータを利用した三相不平衡補償方法について議論した。従来の不平衡指標だけでは,三相不平衡検出および補償不能な場合があることをベクトル図と数値解析により確認した。新たな不平衡指標による検出・補償方法を提案し,電力系統の安定運用に資する研究を行った。 超スマート社会実現のための電力系統,特に配電系統の運用と設計について研究し,そのシステムに属する需要家も参加者として多様な戦略と運用による利益創出方法について言及しつつ、工学的に有用な研究結果を示している。配電技術,システムの構築,サービス内容の提案は総括的に超スマート社会実現に寄与する内容である。
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