研究課題
コンパクトで帯域放射の高効率水の窓 (波長2.3~4.4 nm) 軟X線光源により,生体細胞をシングルショット撮影できる卓上型軟X線顕微鏡を開発し,研究室サイズで生命科学分野に貢献できるインパクトのある撮影を目指すことを目標とした.高効率水の窓軟X線光源を実現するため,従来の線放射ではなく帯域放射により,シングルショット撮影に必要な出力を確保し,変換効率も従来方式よりも10倍以上大きい0.1%以上にし,シングルショット撮像を実現しようとする研究である.このため,多価イオン光源のスペクトル構造と光学的厚みを制御することで,帯域放射光源を高出力化するとともに,この光源を組み合わせて軟X線顕微鏡の実証実験を行うことにした.最初に,スペクトル効率を改善するために,希薄プラズマによる白金多価イオンからの炭素の窓軟X線放射特性を明らかにすることにした.そこで,白金を対象とし,スペクトルの電子温度依存性を明らかにした.Unresolved transition array (UTA) スペクトル構造が波長4.6 nm近傍に観測された.また,電子温度は600~1700 eVの領域で発光強度は強くなっており,電子温度の変化に対して鈍感であることが明らかになった.これらに加えて,衝突放射モデルを組み合わせて計算された放射能率の電子温度依存性も計算した.計算結果のピーク波長は長波長側に約0.4 nmずれており,発光強度が大きくなる電子温度も観測結果よりもやや低温であることが分かった.次に,レーザー生成ビスマスプラズマのスペクトル解析とスペクトル制御について簡単に報告する.二重パルス照射法により発光スペクトルの振る舞いと光子数を明らかにした.現在,放射流体数値解析を進めているところである.
2: おおむね順調に進展している
1年目は,(1) 重元素多価イオン(特にBi)UTA光源の高輝度化・高効率化を,(2) 多価イオン光源の放射流体シミュレーションを駆使するスペクトル構造の能動的制御することで達成するように研究を進めてきた.放射流体数値解析は状態方程式のほか,放射流体コードの改善を進め,実験結果とのベンチマークを行っている.これらと並行して,(3) Biプラズマ光源を生体顕微鏡に適用し,HeLa S3細胞をフラッシュ撮影し,撮像した結果から分解能などを評価しているところである.以上のことから,進捗状況はこの区分でよいのではないかと考えている.
2年目は,(3) 細胞をフラッシュ撮影を進めるとともに,(2) 多価イオン光源の放射流体シミュレーションを駆使するスペクトル構造の能動的制御する点について,放射流体数値解析は状態方程式のほか,放射流体コードの改善を進め,実験結果とのベンチマークを行い,光源の更なる高輝度化についての指針を得る予定である.
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