研究課題
高効率軟X線光源を実現するため,重元素多価イオンの持つ膨大な遷移から得られる帯域放射により,変換効率の改善を目指した.プラズマにおける自己吸収効果とスペクトル構造を制御することで光源の高出力化を図る.自己吸収効果は質量吸収係数と密度とプラズマの膨張距離に依存し,直接観測できない.そこで,間接的に測定するため,ターゲットの初期密度と照射パルス幅を変化させてスペクトルを観測した.ターゲットの初期密度を変化させた実験では,観測されたスペクトル形状に大きな違いは得られず,初期密度による吸収構造は観測されなかった.また,照射パルス幅を変化させた実験では,観測されたスペクトルはパルス幅に起因する自己吸収効果の影響よりも,発光に寄与するイオン量の影響が確認された.以上の結果から,重元素多価イオン光源において自己吸収効果の影響は小さいことが示された.顕微鏡で用いられる波長域内の光子数を増加させ,高効率化を図るために時間変化に対するスペクトル形状の変化を数値解析し,実験結果と比較した.重元素多価イオン光源における数値解析はレーザーパルスのピーク時刻で止まり,それ以降の計算が進められないのが現状である.この時のスペクトル形状の結果は実験と比較して2つある疑似連続スペクトル (UTA) 構造の強度比が異なっていた.そこで,ピーク時刻以降スペクトル形状がどのように変化するのかを調べた.衝突輻射モデルを用いて得られる放射能率と質量吸収係数の電子密度・電子温度依存性を確認すると,密度・温度の変化によって, UTA の強度比が異なり,ピーク時刻における臨界密度近傍の最大電子密度に比べ,低密度低温側で所望の UTA 構造を強く発光できることが確認された.この結果は実験において,低密度低温側のプラズマ領域を時空間的に広げることで,変換効率の改善に繋がり,高出力化を実現できる指針を与えたものである.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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