研究課題/領域番号 |
17J09127
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中野 雅史 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 粒子フィルタ / 投資 / 機械学習 / ファジィシステム / 金利モデル / ファイナンス / カルマンフィルタ / 深層学習 |
研究実績の概要 |
研究者は、粒子フィルタと呼ばれる統計的推定手法を用いて、投資家の目的に沿ったポートフォリオを構成できる新しい投資手法を” Creating investment scheme with state space modeling”において提案した。本論文は、Expert Systems with Applicationsという査読付き国際論文誌に掲載された。 また、人間が行う総合的・多層的な意思決定過程を計算機上で実現できる Fuzzy Systemという機械学習の手法に着目して、それを投資意思決定に応用する研究を行った。具体的には、投資候補として存在する複数のポートフォリオに対して、定性的な複数の観点からの評価を統合して定量的に評価できるFuzzy systemを適用することで投資先を決定するという新しいKnowledge based systemを” Fuzzy logic-based portfolio selection with particle filtering and anomaly detection”で提案した。本論文は、Knowledge-Based Systemsという査読付き国際論文誌に掲載された。 さらに、研究者はより現実の市場環境に即した新しい金利モデルを提案した。その研究の特徴は、イールドカーブの変動要因として,従来の「レベル変化」と「スプレッド変化」に加え、市場が期待する国債純供給量」を考慮した時系列モデルを提案したことにある。” On the effect of Bank of Japan’s outright purchase on the JGB yield curve”という本論文は、Asia-Pacific Financial Marketsという査読付き国際論文誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究者は,国民の資産形成強化に寄与するために,粒子フィルタという統計的手法や,近年隆盛しつつある機械学習の手法を用いることにより,優れた資産運用手法を開発する研究を行った.結果として,平成29年度は4本の論文が査読付き国際論文誌にアクセプトされるという大きな結果を得ることができた。これは、当初の計画以上に進展しているといっても過言ではないだろう。 特に、研究者は,機械学習の手法の中でも特にFuzzy System(FS)という手法に着目して研究を行った.FSは,人間が普段さり気なく行う総合的・多層的な意思決定過程を計算機上で実現するAIであり,高度な専門家知識を計算機上で再現することに適している.FSに経済や金融の専門家知識を適切に導入し,資産運用への応用を行った研究は未だ不十分である中,本年度筆者が行った研究は,金融と工学の2分野に跨る分野横断的な研究という事ができるだろう. また,研究者は,近年急速に技術発展が進んでいる深層学習を、ビットコインのリターン予測に応用した論文である”Bitcoin technical trading with artificial neural network”を発表している.ビットコインが国民の身近な投資対象となりつつある現在,その変動の大きさが投資家に与える負の影響を軽減できないか,ということを目的として,深層学習を応用した投資手法を提案した.その結果,研究者の手法に基づいた予測を適切に取り入れることで,変動性の高さやドローダウンを抑え,リスクリターンの効率性を大幅に高めることができることを発見した.本論文は,現在Physica A: Statistical Mechanics and its Applicationsという査読付き国際論文誌に投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
研究者は今後も、粒子フィルタと機械学習を用いた資産運用に関する研究を引き続き研究していく予定である。 特に、30年度は機械学習の中でもより深層学習に重点を置いて研究を進める予定である。近年、理論的裏付けはまだ不十分ではあるが、深層学習が最適制御問題に非常に有効であるということが判明しつつある。ファイナンスの分野でも数多く登場するこれらの問題は、通常多次元の非線形偏微分方程式へと帰着されるが、既存の手法では解析解を求めるのはもちろん、数値的に求めるのも非常に困難であった。しかしながら現在、深層学習という全く新しいアプローチによってこの問題は解決されつつある。他に先んじてこの手法を、ファイナンス上重要であった未解決問題に応用し、部分的にもその問題を解決することで、数量ファイナンスの発展に寄与したいと考えている。
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