研究課題/領域番号 |
17J09148
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 裕太 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 熱電変換素子 / 非晶質InGaZnO |
研究実績の概要 |
酸化物材料(非晶質InGaZnO)に生体超分子により形成したナノ構造を埋め込み、熱電特性の改善を行った.ナノ構造導入の結果、ゼーベック係数は減少するが導電率は増加し結果として性能が約3倍改善された.高密度ナノ粒子を導入した試料ほど改善効果が大きく見られた。また粒子材料によって顕著な違いが見られなかった.この結果から、ナノ構造による特性改善は、熱電材料とナノ粒子界面で形成された欠陥が起因していると考えられる. また、更なる熱電特性の検証として熱伝導率や高温度域におけるパワーファクタの特性の結果を補足し、性能指数(ZT)の算出をした.この結果から、300 KにおけるZTは,IGZOがアモルファス構造を有していながらバルク材料であるInGeOやAlZnOと相当する結果であることが判明した. さらに、InGaZnOと透明電極を使用して素子の試作を行い透明熱電変換素子が実現できることを示した。デバイス応用として、熱電変換素子は一般にn型材料とp型材料を直列に繋いで縦方向に伝熱させるπ型構造で構成される場合が多いが,本研究では薄膜熱電材料を用いて素子の作製を行うため,面内に横方向の伝熱を実現して高い電力密度を確保することができるトランスバース型という構造を採用した.今回はフレキシブルな基板であるPEN 基板上を用いて,トランスバース型IGZO/Mo-熱電素子を作製しその特性評価を行った.素子の1/3を触れた際、室温と体温の温度差で19.2 mVの起電力を得ることができた. 使用したIGZOのゼーベック係数はおおよそ100 uV/Kと確認しており、セル間に約1 ℃の温度差ができていることが確認でき,、ヒートガイドが設計通り働いていることがわかった.以上のように今回フレキシブルPEN基板上のIGZOを用いてトランスバース型熱電素子の実現に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
InGaZnOの熱電特性の改善や用途開発に向け取り組んできた。バイオナノ技術を用いたナノ構造導入によってInGaZnOの熱電特性の向上を示した。また、InGaZnOと透明電極を使用して素子の試作を行い、透明性やフレキシブル応用といった特殊用途の熱電材料として利用可能な熱電変換素子を実現し、デバイス構造の最適化や解析評価についても順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
フレキシブルPEN基板上にInGaZnOと透明電極を用いたトランスバース型熱電素子の実現に成功したが、発電力はまだ極微小であり、デバイス構造の改善や材料の性能向上が求められるところに未だ課題が残る。今後はITOの低抵抗化,IGZOの熱電特性の向上,IGZO-ITOの形状最適化をすることでより高い電力密度を実現する。
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