研究課題
円錐動脈幹奇形の単一家系、内臓錯位症候群の複数家系に対する全エクソーム解析、情報科学的解析から、前者においては劣性遺伝形質を想定し、疾患と遺伝子型のsegregation解析により、候補遺伝子Xの両アレル変異を、後者の解析からは、de novo変異として線毛構成因子である遺伝子Yのバリアントを抽出し得た。いずれも、複数のin silico解析でタンパクの機能障害が予測され、アレル頻度の低い、或いは全く認められない、レアバリアントであった。病原性の検証のために、遺伝子XおよびYのアンチセンスモルフォリノを用いた、ゼブラフィッシュ胚の遺伝子ノックダウンを実施した。心筋特異的なcmlc2遺伝子アンチセンスプローブを用いたin situ hybridizationを行うことで、胚の心臓ルーピング異常をリードアウトとしたスクリーニングを行った。ついで、遺伝子X、Yに関し、遺伝子改変による変異体作出を、進めた。CRISPR-Cas9システムを用いたゲノムターゲッティングを行うための予備実験として、設計したガイドRNAのターゲッティング効率を検討した。細胞株(COS-7)において、ガイドRNA、Cas9 mRNAの発現ベクターを組み合わせたDNA切断効率評価系を用いて検証し(Mashiko D et al, Sci Rep. 2013;3:3355.)、以後の実験に使用するガイドRNA配列を選定した。東京大学理学系研究科 武田洋幸教授との共同により、ゼブラフィッシュ胚の遺伝子改変を、東京大学医学系研究科 疾患生命工学センターとの共同により、マウス受精卵の遺伝子改変を、進めている。遺伝子X、Yの遺伝子改変F0変異体(Xについてはゼブラフィッシュのみ、Yについてはゼブラフィッシュ、マウスの両方)を得た。今後は、ホモ変異体を安定して得ることを目標とし、系統の交配・維持・解析を準備中である。
2: おおむね順調に進展している
全エクソーム解析とその後の、情報科学的解析によって、複数の疾患原因遺伝子候補を同定することに成功している。モルフォリノを用いた、ゼブラフィッシュ遺伝子ノックダウンの系のみでは、オフターゲットな影響を排除しえず、同遺伝子の病原性を確定するには至らないと考えた。CRISPR/CASによる標的遺伝子改変動物を用いた解析により、表現型の再現を得る必要があると判断した。動物モデルによる、遺伝子機能解析に向けて、遺伝子改変のための実験条件の検討などを周到に進め、現在、ヘテロ変異体を得るに至っている。順次、ホモ変異体の解析に向けた準備が整いつつある。また、積極的な学会発表、論文執筆を通じて、成果を発信できている。
疾患関連遺伝子候補の機能について、動物モデルによる解析を進める。ゼブラフィッシュにおいては、ヘテロ変異体同士の交配を始めているが、ホモ変異体の生魚を得ることに苦戦している。24hpfまではメンデルの法則に従った比率で全ての遺伝型が出現するので、二次的な理由で発育していない状況が想定される。24hpfにおいてコリオンを除去する、心臓ルーピングをリードアウトに変異個体を含む集団を隔離・別飼育する、など、安定してホモ変異体が得られるような工夫を施す。ホモ変異体を得たのち、心臓形態に着目した表現型解析を行う。表現型解析に際しては、遺伝子発現解析、組織染色など病理学的解析を駆使する。マウスに対し、CRISPR/CASによって作出したF0キメラ変異体への変異導入効率が、想定以上に良好であった。得られたF0個体20匹は全て、両アレルに、異なる変異を保有し、多くのF0個体が機能障害(水頭症など)を呈している。生殖、系統維持、という点において不利であり、現在は安定した交配を得ることに苦労している。F0同士の交配を諦め、一旦は野生型マウスと交配することで、ヘテロ変異体(F1)を作出する。ヘテロ変異体同士の交配により得られるホモ変異体について、心臓形態に着目した表現型解析を行う。表現型解析に際しては、遺伝子発現解析、組織染色など病理学的解析、心臓超音波を駆使する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Circulation: Heart Failure
巻: 11 ページ: e004660
10.1161/CIRCHEARTFAILURE.117.004660