研究課題
前年度行った数値計算を用いた構造模擬の結果、用いたモデルにおいて実験で観測された構造と進展速度を達成するには、換算電界強度に三倍以上の非物理的な補正をかけなければならないことが分かった。このことは、電離を誘起する、従来モデルでは考えられていないメカニズムが存在する可能性を示唆している。さらに前年度の分光実験においては、電離波面における励起温度が7000 K程度と比較的高い温度になっていることが観測され、このような高い励起温度領域が進展に影響を及ぼす可能性が示唆された。本年度は、これら前年度の研究の結果を踏まえて励起中性粒子が電離波面における電離を誘起する可能性に注目し、進展メカニズムの解明を目指した。高エネルギー励起中性粒子は基底状態の中性粒子に比べて低いエネルギーの電子との衝突でも電離することが出来、この励起中性粒子が十分存在すれば電離を誘起することが可能である。しかし、このような励起中性粒子は電子数密度の高いバルク領域において主に生成されるため、電離波面の進展に寄与するにはこれを駆動しているプリカーサ領域まで励起中性粒子を輸送する過程が存在しなければならない。そこで、本研究において光脱励起で生じる光子がバルクからプリカーサに励起中性粒子を輸送することで電離波面を駆動する新しい進展メカニズムを提唱した。この光子による輸送を、拡散近似を用いて定式化し、さらに中性粒子の励起状態についても簡素な仮定を導入して定式化することで、このメカニズムによる電子波面の進展を数値的に模擬した。また、各パラメータに対する進展速度の依存性も調査した。この結果、クエンチングの周波数が10^6 /s程度以下であれば、計算で得られる進展速度が入射ミリ波強度によらず実験値の50%程度となり、先行研究に比べて非常に良い一致をみせた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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