研究課題/領域番号 |
17J09295
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今枝 秀二郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 転倒 / 大腿骨 / 骨折 / 高齢者 / 地域在住 / 転び方 / 東大病院 / 大牟田市 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に下記の2つの調査から結果を得た。 [大牟田市における転倒調査] 本調査では、大牟田市消防本部の協力を得て、2016年度に出動した救急車のデータから転倒事例の抽出を行なった。4,800件近くの搬送記録にたいして、1/3が転倒による搬送であることが分かった。さらに、年齢ごとの転倒件数、転倒場所、地域ごとの転倒事例の件数等を明らかにした。この結果から、高齢者に限らず人々が地域でどのように転倒しているかという実態が分かった。 [東大病院における大腿骨骨折による入院患者調査] 本研究からは、大腿骨骨折を骨折した高齢者がどこで、どのように転んでいるのかを、入院時のインタビュー調査によって明らかにした。その結果、調査した半分近くが自宅の住戸内で転倒していること、トイレへの往復時に転倒していることが判明した。転び方に特徴は見られなかったが、ふらつきによる転倒が多く見られている。さらに、退院後の自宅訪問調査も実施し、転倒場所の確認やその後の生活の変化等に関する聞き取り調査を行なっている。本調査では、高齢者の大腿骨骨折という、生活に大きな変化を及ぼす怪我をした転倒がどこでどのように発生したかを、インタビュー及び現場の調査から詳細に明らかにしたとともに、さらに病院での入院・手術を経験した高齢者が退院した後の生活の様子も分かった。 両者の調査結果によって、今まで不明瞭であった実生活中の転倒の実態が明らかになっており、身体的な要因に加えて建築等の環境要因が転倒へどのように関係しているかがわかってきている。したがって、本結果は今後の高齢者の転倒予防策を進める上で重要な知見となるとともに、高齢者が地域で居住し続けられる住環境要因を探る上での基礎情報となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大牟田市での調査では、当初の計画通りに5年分のデータを入手することができており、場所等の個人情報に関する分析は5年全て、他の転倒の抽出は1年分の分析が完了している。また、その1年分の分析については、1部を大牟田市への共同研究報告書(平成30年度大牟田市住生活基本計画改定現況調査報告書)の中にまとめることができた。さらに、データの分析結果については、データの提供元である大牟田市消防本部へ報告を適宜行い、フィードバックを行なうとともに、分析結果に対する意見を頂きその都度分析に生かした。 東大病院での調査では、目標件数50件に対して、事例数は33件であったものの、それぞれに対して予定していた詳細な調査全てを行なうことができた。さらに、自宅訪問調査も8例分実施できたことで、転倒時の状況をインタビューだけでなく実測調査が可能となった他、本人以外の家族へのインタビューからより詳細かつ正確な転倒状況の把握ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、大牟田市でのデータ分析と東大病院における調査研究を継続して行なう。 まず前者では、残る4年分のデータの詳細な分析を実施するとともに、全5年分の推移を見ることで、転倒に関する傾向を把握する。さらに、個別の転倒事例について、昨年度末実施したアンケート調査を元に、大牟田市内で自宅訪問調査を実施する予定である。この訪問調査から、より正確な転倒状況の把握が可能になると期待できる。 後者の東大病院についても、継続して入院患者のインタビューを行なっていくとともに、本年度は自宅訪問調査の比重を上げ、さらなる事例を収集する予定である。
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