研究課題/領域番号 |
17J09349
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
島村 由香 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 家族計画 / 厚生 / 農村社会 / ルワンダ |
研究実績の概要 |
これまでの調査では、ホルモン避妊薬の副作用が女性の労働従事を阻害することにより生産能力が低下しうることを明らかにした。それを踏まえ、本年度は、生産能力に対して負の影響を与えることなく、避妊を実行することができるコンドームの使用可能性について、調査を実施した。2018年8月、11月、ルワンダにて60組の夫婦を対象とする聞き取り調査を実施し、コンドームに対する認識、態度などを明らかにするとともに、当該社会においてコンドームが家族計画目的で積極的に使用されてこなかった要因に関して、社会文化的な背景を中心とする阻害要因について特定することができた。
2018年6月に行われた、日本人口学会第70回大会では、ルワンダ農村社会において特に土地制度の変容が人口動態に与える影響について報告を行うとともに、人口学研究会第606回定例会では、ルワンダ農村部の家族制度の成文化ついて、人口政策としての位置づけについて報告を行った。
10月に開かれた東京大学新領域創成科学研究科20周年記念式典シンポジウムでは、所属する専攻の代表として選出され、発表を行い、ポスター賞を受賞した。11月に開催されたInternational Conference on Family Planning 2018では、8月の調査結果について発表を行った。調査対象地であるルワンダの首都キガリで行われことから、本研究を政府関係者等へ提示することができる機会となった。サブ・サハラアフリカの家族計画に焦点が絞られた研究が集結しており、同国保健省やNGO関係者らとも意見交換を行うことができ、同学会への参加意義は非常に大きかった。また、同月に行われた第29回国際開発学会では、人口政策、特にリプロダクティブヘルス政策としての家族計画と性感染症対策間の軋轢について報告した。また、昨年度の研究成果を論文としてまとめ、国際誌に投稿準備ができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際人口政策、とくに家族計画プログラムの遂行が、世帯の厚生に与える影響を明らかにするという本研究課題について、副作用を伴う避妊実行の結果が、女性の人的資本及び家計の資源配分に及ぼす影響についてのデータ収集および分析は概ね完了している。副作用のない避妊法への移行における現状と課題については、現在昨年度の調査結果をまとめているところであり、ルワンダの関係省庁、研究機関に対して報告・共有する準備が進んでいる。すでにルワンダ医療センター(RBC: Rwanda Biomedical Centre)より、農家世帯の避妊法の選択に関する問題ついて、これまでの研究結果を報告してほしいとの依頼を受けるなどしており、関係者の関心の高い研究成果を出せているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの調査に基づく分析結果について、ルワンダの関連省庁をはじめとする関係者に共有、フィードバックを行うとともに、研究成果の社会実装の可能性について議論することを主な目的とする。現在は、9月の渡航に向け、報告準備を進めている。また、前年度と同様に、国内外の学会でも発表を行う予定である。特に重要なものとして、2019年11月に開催される第8回アフリカ人口会議(8th Africa Population Conference)、および12月に行われる国際保健医療学会(第34回大会)での報告を計画している。本研究成果は国際学術誌へ投稿するとともに、避妊行動を通していかに農家世帯の厚生が改善されるかについて、社会実装の可能性についての議論も含め、博士論文としてまとめる予定である。
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