研究課題/領域番号 |
17J09381
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
河原 梓水 国際日本文化研究センター, 研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | サディズム / マゾヒズム / クラフト=エビング / 呉秀三 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本におけるサドマゾヒズム概念の受容期に関する歴史的・思想史的研究である。本年度の研究課題は、サドマゾヒズム概念が日本でいかに受容されたのかを、ヨーロッパ精神医学界の議論と、日本精神医学界で重要な位置を占める精神医学者・呉秀三のサドマゾヒズム理解とを比較検討することで明らかにすることであった。年度前半は、国内において資料収集・検討を行い、年度後半はドイツ国ベルリン市・ベルリン自由大学を拠点として未邦訳の文献・先行研究を収集・検討した。その際には第一に、サドマゾヒストの早期発見・治療による犯罪の予防、第二に、サドマゾヒズムを異常性格、神経症、精神症いずれに分類するか、という議論に特に着目し、サドマゾヒズム概念を創始したとされるクラフト=エビング著作におけるサドマゾヒズム理解の変遷と、呉秀三『精神病学集要』各版における理解の変遷を比較検討した。その結果は以下の通りである。すなわち、クラフト=エビングは、サドマゾヒズムを異常性格とみなしたが、呉においては他の障害・病を併発する精神病とみなす傾向が強く、時期が下るにしたがってメインの障害・病における症候の一つと捉えられてゆく。このために、その後サドマゾヒスト、特にサディストが精神薄弱など種々の病を伴う潜在犯罪者として危険視されていくことにつながっていくと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画を予定通り遂行できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究実施計画に基づき、研究を進めていく予定である。来年度は引き続き、精神医学、性科学の文献を検討することに加えて、社会心理学における暴力論を新たに検討対象とする。具体的には、サドマゾヒズムと本能の関係を論じたテクストに着眼する。ハヴロック・エリス、ウィリアム・ジェームズなど、日本への影響が大きい心理学者のテクストには、人間に「闘争本能」や「排撃本能」などの暴力衝動があることを前提とし、これを戦争に代表される様々な暴力を論ずる際に重視するものが多くある。これらはしばしばサドマゾヒズムと深く関連する。これらの議論の展開を検討し、その日本への影響を検討する。
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