本研究は、日本におけるサドマゾヒズム概念の受容期に関する歴史的・思想史的研究である。本年度は、社会心理学における暴力論を検討しつつ、フィールドワークを行なった。 今年度も、ドイツ国ベルリン市・ベルリン自由大学東アジア研究所を拠点として研究活動を行ない、論文1本、解説記事1本の執筆、1度の国際会議での発表、2度の招待講演を行った。 文献の収集・検討に加えて、ベルリン市およびその近郊における、性的マイノリティーに関する史跡や博物館の調査・見学、同市に所在するSMスタジオ、愛好者コミュニティサークルにおけるフィールドワーク、プロのドミナトリクスとして活動しているSM愛好家へのインタビュー調査などを行った。これらの調査において、日独において性的マイノリティーが置かれた歴史的状況の相違を確認するとともに、現代SMカルチャーのSNSにおける展開、安全性のためのガイドラインに対する様々な考え方、ヨーロッパ全体におよぶ愛好家のコミュニティーのあり方、そしてドイツにおけるLGBTIQの社会的受容についての知見を得、日本の歴史的状況の相対化を行なった。
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