研究課題/領域番号 |
17J09408
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
石崎 隆弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 寄生虫学 / ネズミマラリア原虫 / 赤血球侵入 / シグナルカスケード / 遺伝子編集 |
研究実績の概要 |
マラリア原虫の赤血球侵入は原虫の生存に必須なステップであり、宿主への病原性と密接な繋がりを持つ。赤血球から脱出した原虫はマイクロネームやロプトリーといった細胞小器官から種々の分子を順序立てて分泌しながら赤血球侵入を行う。マイクロネーム分子の分泌には細胞外液組成である低カリウム条件に起因するCa2+シグナルが関与することが明らかとなっているが、分子分泌に至るシグナル経路には不明な点が多い。本研究はネズミマラリア原虫を用いて、後期シゾント期における発現が高いキナーゼ群をDiCre-loxPシステムにより誘導型欠損させた原虫を使って、赤血球侵入に関わる標的キナーゼの同並びに、表現系の得られた分子の下流分子の探索を目的とする。 本年度は、得られたloxP挿入原虫もしくは遺伝子欠損原虫のうち、3つのキナーゼにおいて侵入能力が有意に減少するという結果が得られた。これら得られた3つのキナーゼのうち、2つのキナーゼは侵入能力、マウスへの病原性に対して顕著な減少が見られたことから赤血球侵入関連分子の分泌を免疫蛍光抗体法により評価した。その結果1つのキナーゼでは分子分泌のタイミングが遅れるということ、別のキナーゼでは侵入関連分子群の分泌そのものが低下するということが明らかとなった。これらの結果が引き起こされる分子メカニズムを明らかにするために、次年度はリン酸化プロテオーム解析及び、リン脂質メディエーターの探索を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘導型遺伝子発現抑制システムと誘導型遺伝子欠損方法であるDiCre-loxPシステムの確立に成功したため。また、詳細な下流シグナルの分子同定までは至っていないが、赤血球侵入に関わるであろう表現系が3つの標的キナーゼ欠損群で得られたことより上記区分での評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
上述のDiCre-loxPシステムを用いて作製した組換え原虫に対して、リン酸化プロテオーム解析による下流分子の同定及びタイムラプス解析による標的キナーゼが関与する原虫の赤血球侵入ステップを明らかとする。 侵入及び、原虫の有性生殖ステージに関与するであろう標的キナーゼに対しては、有性生殖原虫の赤血球からの脱出、蚊体内におけるオーシスト及びスポロゾイト数を評価していくことにより機能を明らかにする。 さらに、これらと並行して未解析の候補遺伝子群に対しても順次誘導型遺伝子欠損原虫の作製並びに表現系解析を行っていく。
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