研究課題/領域番号 |
17J09438
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青田 雄介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 有機分子触媒 |
研究実績の概要 |
光学活性なアミン触媒由来のエナミン中間体と求電子剤との反応は、アルデヒドまたはケトンを立体選択的に変換する上で強力な手法となっている。特にプロリンに代表されるように、アミン触媒とブレンステッド酸触媒が協同的に機能する反応系が盛んに研究されている。しかし、アミン触媒の高い塩基性のために同時に利用できる酸触媒の酸性度は限られており、そのことが求電子剤の適用範囲を限定していた。その一方で、アミドはアミンと比較して求核性が低いことから、対応する活性種であるエナミドの求核性も低く、触媒としての利用例もない。このような背景のもと、本研究ではアミドの温和な塩基性及び求核性に着目し、従来のアミン触媒が機能しないような強酸性条件においても、アルデヒド及びケトンを活性化できる触媒系を確立を目指している。 昨年度に取り組んだ不斉触媒反応においては、反応条件化で生成物がラセミ化するという問題点があった。そこで本年度は求核剤としてα位が2置換のアルデヒド、触媒としてはベンズアミドなどの1級アミドを用いて反応条件を検討した。また昨年度と同様に求電子剤としては、ジフェニルメタノールから酸性条件下で生じるカルボカチオンを利用した。しかしながら、このアルデヒドとアミド触媒の組み合わせでは、対応するエナミドの形成が極めて遅く、アミドは触媒として機能しなかった。また、アミド以外にカルバメートやウレア、スルホンアミドなども検討したが、触媒としては機能しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生成物のエノール化に伴う、ラセミ化を防ぐことを目的として、α位が2置換のアルデヒドを原料として用いたところ、立体障害が大きくなったためか、活性種であるエナミドの形成が極めて遅くなった。少量のエナミドでも円滑に反応を進行させるために、ジフェニルメタノールの芳香環上に電子供与基を導入して、系中で発生するカルボカチオンの安定性を向上させたが、この場合、エノールから直接反応が進行してしまうため、アミドは触媒としては機能しなかった。 一級アミドを用いることで、アミド触媒側の立体障害を小さくして、エナミドの形成を加速させようとしたが、この試みも上手くいかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、強酸性条件下においてはアミドは触媒としては機能していないと考えられる。しかしながら、アルデヒドから生じたエノールが直接カルボカチオンと反応するという知見が得られている。そこで、当初の研究計画からは外れるが、光学活性な酸触媒のみを用いて、求核剤であるアルデヒドの活性化と、ジアリールメチルアルコールからのカルボカチオンの生成、及び付加反応における立体化学の制御に取り組む。
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