研究課題/領域番号 |
17J09467
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 幸佑 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 精子 / ヒストン / ChIP-seq / クロマチン / 老化 |
研究実績の概要 |
本研究では、Nucleoplasmin(以下、NPM)を用いて、精子クロマチン構造を評価する際の障害となる精子特異的タンパク質であるプロタミンを除去することによって、精子クロマチン構造を再評価することを目的とする。当該年度においては、(1)NPMを用いた若齢マウス精子クロマチン調整およびChIP-seqの実施、(2)NPM処理若齢マウス精子を用いたATAC-seq解析、(3)加齢マウス精子および環境因子曝露マウス精子の採取を計画した。以下にそれぞれの詳細について記載する。 (1)NPMを用いた若齢マウス精子クロマチン調整およびChIP-seqの実施においては、ChIP-seq解析まで完了した。解析の結果、精子ヒストンはその多くが、遺伝子間領域に存在するものの、精子H3K4me3は発生に関与する遺伝子の転写開始領域に局在することが判明した。この結果は精子ヒストンが転写開始領域に局在するという報告と、精子ヒストンが遺伝子間領域に局在するという報告の、精子ヒストン局在性に関する相容れない結論(Sato et al., Dev Cell, 30, 2014)を矛盾なく説明することができた。また、精子H3K9me3はセントロメア・ペリセントロメアに特徴的なサテライトリピートに局在しており、これは精子における蛍光免疫染色の結果とも合致しており、NPMを用いた精子ヒストン局在性解析が有用であることを示せた。 (2)NPM処理若齢マウス精子を用いたATAC-seq解析に関しては、NPM処理によって、精子クロマチンがほぼ全て(~99%)フリーDNAとなってしまったため、特徴的な領域を検出できなかったため、条件を検討中である。 (3)加齢マウス精子および環境因子暴露マウス精子の採取に関しては、加齢マウス精子の採取・精子クロマチン調整・ChIP-seqの実施まで進行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、(1)NPMを用いた若齢マウス精子クロマチン調整およびChIP-seqの実施、(2)NPM処理若齢マウス精子を用いたATAC-seq解析、(3)加齢マウス精子および環境因子曝露マウス精子の採取を計画したが、(1)NPMを用いた若齢マウス精子クロマチン調整およびChIP-seqの実施、および、(3)加齢マウス精子および環境因子曝露マウス精子の採取が特に進捗した。 当該年度の計画では、(1)NPMを用いた若齢マウス精子クロマチン調整およびChIP-seqの実施において、ChIP-seq解析の実施までを予定していたが、研究が順調に進んだため、蛍光免疫染色等を用いたChIP-seq解析の妥当性を評価することができた。これは当初の研究計画において、平成30年度に実施予定だった研究である。また、上述の研究内容によって得られた知見は現在、国際誌に投稿中である。また、(3)加齢マウス精子および環境因子曝露マウス精子の採取においては、加齢マウス精子の採取・精子クロマチン調整・ChIP-seqの実施まで進行した。これも当初の研究計画において、平成30年度に実施予定だった研究である。 しかしながら、(2)NPM処理若齢マウス精子を用いたATAC-seq解析に関してはNPM処理によって、精子クロマチンがほぼ全て(~99%)フリーDNAとなってしまい、特徴的な領域を検出できなかったため、条件を検討中である。 総括すると、精子クロマチン構造評価のために、当初はChIP-seq、ATAC-seqを実施予定であったが、ChIP-seqのみ実施可能であった。しかしながら、ChIP-seqに関しては当初の計画よりも研究が早く進み、新しい知見も得られたため、概ね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの段階で、平成30年度に実施予定だった研究であった、加齢マウス精子の採取・精子クロマチン調整・ChIP-seqの実施まで進行したため、今年度は、(1)若齢マウス、加齢マウスの精子クロマチン構造比較、(2)環境因子曝露マウス精子の採取、および、NPMを用いた精子クロマチンサンプル調整およびChIP-seqの実施、精子クロマチン構造比較を予定している。また、改善策が見つけられれば、Npm2処理若齢マウス精子を用いたATAC-seq解析に関して研究実施を検討する。 また、前年度までの成果である、NPMを用いた若齢マウス精子クロマチン調整およびChIP-seqの実施において発見された、精子特異的ヒストンH3切断フォームについて何か新しい知見が得られれば、研究を遂行する。
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