研究課題/領域番号 |
17J09488
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中内 大介 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | シンチレータ / 放射線 / 結晶成長 / 単結晶 |
研究実績の概要 |
本研究ではFloating Zone法を用いて、これまであまり着目されていなかったHf、Ta、Wなどの重元素を構成元素とする酸化物の単結晶育成を行い、新たな重元素系シンチレータを開発することを目的とする。まず、単純酸化物であるTa2O5の単結晶育成を試みたところ、無色透明の単結晶の合成に成功したため、発光中心として希土類元素を微量添加したサンプルも併せて合成を行った。無添加品は420 nm付近に微弱なブロードな発光、Eu添加品は600 nm付近に強いシャープな発光が観測された。しかし、いずれの希土類添加品においてもガンマ線計測に有効な5d-4f遷移由来の発光は観測されず、本材料では発光中心元素による賦活があまり効果的でないことが示唆される。次にHfO2の単結晶育成を行ったところ、単結晶体ではなく不透明多結晶体が得られた。これはHfO2が温度変化とともに高温域 (>2600度) で安定な立方晶から低温域 (<1700度) で安定な単斜晶へと相転移するためであると考えられる。結晶構造の安定化のためYを10%および100%添加した単結晶サンプルを合成したところ、10%添加品は無色半透明、100%添加品は無色透明な単結晶が得られた。得られたサンプルに対してX線を照射したところ、いずれも500 nm付近にブロードなシンチレーション光を示した。この材料系における単結晶の報告例はなく、非常に新規性の高い結果であると言える。これは大気中および還元雰囲気下における熱処理後の挙動から、酸素欠陥に起因すると考えられる。また、定量値としてシンチレーション発光量を求めるため、137Csガンマ線のパルス波高スペクトル測定を行ったところ、光電吸収由来と考えられるシグナルは観測されたものの、散乱の影響と考えられる低いエネルギー分解能のため、明瞭な光電吸収ピークは得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した母材と発光中心の適当な組合せについて、一次評価として十分な知見が得られた。また、結晶育成法についてもノウハウが確立されつつあり、材料系を工夫することで高品質な単結晶サンプルが得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した材料については目覚ましい性能は得られなかったが、本材料の着手にあたって導入した新たな結晶育成法については確立しつつある。Taについては単純酸化物では有意な結果が得られなかったため、三元系酸化物を中心に検討を進めていく。Hfについては希土類元素とHfO2の複合酸化物の単結晶育成を行うと共に、母材発光を促進するような活性剤の検討を行っていく。
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