研究課題/領域番号 |
17J09501
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
加藤 匠 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 透明セラミックス / シンチレータ / ドシメータ |
研究実績の概要 |
本研究ではシンチレータやドシメータ材料などの放射線計測用の新規材料を開発することを目的に、アルカリ土類金属弗化物透明セラミックスの作製およびそのシンチレーション・ドシメータ特性の評価を行っている。本年度はSrF2透明セラミックスの作製およびシンチレーション特性の評価を行った。 始めに放電プラズマ焼結装置を用いて、真空下で二段階焼結法を用いることで透過性の高いセラミックスが得られることを明らかにした。一段階目の焼結条件は、10 MPaの圧力を印加しながら室温から890 ℃まで10 ℃/minで昇温し、その状態を10分間保持する。その後、二段階目の焼結として印加圧力を100 MPaまで上げるとともに、焼結温度を1080 ℃まで10 ℃/minで昇温し、この状態を20分間保持した後に焼結を終了した。この焼結条件を用いて作製したセラミックスサンプルに対して直線透過率を測定したところ、セラミックスサンプルの直線透過率は単結晶サンプルよりも劣るものの、500 nm付近の透過率は25 %であった。X線誘起シンチレーションスペクトルにおいて、セラミックスサンプルは単結晶サンプルと同様に自己束縛励起子による発光が 300 nmに観測された。続いて、セラミックスサンプルの57Coのγ線励起によるパルス波高値スペクトルを測定したところ、発光量は8,900 photons/MeVであり、単結晶サンプルの発光量と比較すると55 %程度であった。一方で、残光特性を評価したところ、セラミックスサンプルは0.0079 %、単結晶サンプルは0.0153 %であったことから、残光特性においてはセラミックスサンプルの優位性が確認でき、この結果は熱刺激蛍光グローカーブの結果と一致した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、放電プラズマ焼結法を用い、SrF2透明セラミックシンチレータの開発を目指して研究に取り組んだ。結果として透明セラミックスの開発に成功し、シンチレーション特性も評価出来た事から、当初の予定通りの成果が得られたと考えられる。また、SrF2透明セラミックスにEuを添加することでシンチレーション発光量の改善に成功した。 副次的な成果として本研究を進める過程で、修士時より継続してドシメータ用の透明セラミックスの検討も進め、Tbを発光中心として添加したMgAl2O4は、優れた線量応答特性とフェーディング特性を有することを明らかにした。以上のようにSrF2 における当初の予定通りの進展、さらには合わせてMgAl2O4における副次的な研究の進展を総合的に勘案し、期待以上の研究の進展があったと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画として、SrF2透明セラミックスの発光量は単結晶よりも劣っていたため、焼結条件のみならず原料粉末の合成方法の検討を行い、透明性の高い透明セラミックスを作製することで発光特性の改善を試みる。
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