令和1年度はN6-メチルアデノシン(m6A)の脱メチル化酵素であるALKBH5に対してDNAの修飾を行った。 m6Aは多くのmRNA上に見られる修飾であり、mRNAの局在や分解、翻訳量の制御などに関与すると言われている。近年ではm6AがmRNAの上流にあるか下流にあるかで果たす役割が異なることが示唆されている。しかし特定の位置のm6Aを制御する手法が無いために詳細な研究はなされていなかった。そこでm6Aの脱メチル化酵素ALKBH5に配列選択性を付与することで特定の位置のm6Aを選択的に脱メチル化できるのではないかと考えた。相補的なDNAとRNAが二本鎖を形成することに着目し、ALKBH5にDNAを結合させることで特定のRNA配列近傍のm6AのみをALKBH5によって脱メチル化しようと試みている。平成30年度では(1)DNAを結合させ、(2)非特異的なALKBH5の脱メチル化反応を抑制するためのALKBH5の改変と、π-Clamp法を用いたALKBH5とDNAの結合を行った。しかし収率や活性が低かったため、令和1年度では別の方法でALKBH5とDNAを結合させた。 N末端にGGG配列をもつタンパク質とC末端にLPETG配列をもつタンパク質を結合させることのできるSortaseという酵素を用いた手法や、タンパク質と融合したHalo-tagタンパク質とその基質の結合を利用した手法を用いてALKBH5の標識を行った。Sortaseを用いた方法では活性を失ったが、Halo-tagタンパク質を用いた方法では活性のあるALKBH5-DNA結合体を得ることができた。そして標的配列をもつm6Aを含むRNAへの脱メチル化が確認された。一方で脱メチル化活性は大きくはなかった。今後は脱メチル化活性の改善を行い、特定のm6Aを脱メチル化させた際に細胞の挙動がどのように変化するか解析したい。
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