• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

野生ニシローランドゴリラの父性行動から探る学習の情報源としての父親

研究課題

研究課題/領域番号 17J09672
研究機関京都大学

研究代表者

田村 大也  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワードニシローランドゴリラ / 父性 / 霊長類 / 社会関係 / 人類進化
研究実績の概要

ヒトに最も近縁な大型類人猿(チンパンジー・ゴリラ・オランウータン)のうち、ゴリラ属のみが単雄複雌群を形成する。ゴリラの群れではシルバーバックと呼ばれる一頭の成熟オスが群れに在籍するメスとの交尾を独占する。そのため、群れで産まれるすべての子供の遺伝的な父親はそのシルバーバックとなる。さらに、子供は離乳期になると母親から離れてシルバーバックに近づくようになり、この頃からシルバーバックは社会的な父親としての機能も持つと考えられる。ゴリラの父子間で見られる社会的関係を明らかにすることは、現生人類の社会における特徴の一つである「明確な父性の確立」の起源の解明に繋がるだろう。
本研究課題では、野生ニシローランドゴリラの一群を対象に、父子間交渉に関する行動データの収集を行った。調査地はガボン共和国ムカラバードゥドゥ国立公園で、平成30年度の調査期間は2018年9月から2019年2月までの6ヶ月間であった。現在、調査対象群は、同一の群れにシルバーバックと血縁のある未成熟個体と血縁のない未成熟個体が同時に在籍するという特異的な状況にある。そこで、血縁の有無による父子間交渉の相違を検討した。
調査の結果、血縁未成熟個体はシルバーバックとの5m以内の近接が頻繁に観察されたのに対し、非血縁個体ではその頻度が明らかに低かった。また、母親から独立している非血縁個体では、頻繁な近接相手がシルバーバックではなく、一頭のオトナのメスである傾向が見えた。一方で、シルバーバックは非血縁個体に対し敵対的行動を示すことはなく、低頻度ではあるが5m以内の近接やシルバーバックの周囲で遊ぶ、移動時にシルバーバックに追随する、同樹上で採食する、といった非血縁個体を許容する行動が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在の研究対象群は、上述したように基本的なゴリラの群れ構成とは異なっており、特異的な状況にある。このような群れ構成は事例的ではあるものの、稀にしか観察されない貴重なものである。また、人づけの難しさや生息環境の視界の悪さから、野生下での直接観察や終日追跡が困難であると言われているニシローランドゴリラにおいて、十分な行動観察が行えている。また、これらの観察の結果、血縁の有無によるシルバーバックと未成熟個体の交渉の相違も見えてきた。今後は、この相違が単に血縁の有無によるものであるのか、または性別や群れの在籍期間によって変化するものなのか、さらなる量的なデータによって明らかにする必要がある。

今後の研究の推進方策

平成31年度も引き続きガボン共和国に渡航し、現地で野外調査を行う。渡航期間は2019年7月から12月の6ヶ月間を予定している。昨年度、観察対象とした群れを対象に継続して行動観察を行い、量的な行動データを蓄積していく。次回の渡航では、前回の調査から約半年の期間が空いているため、シルバーバックと未成熟個体の社会関係の時間的変化に主に着目する。
また、現在群れに在籍している未成熟個体の多くが、DNA分析による父子判定が行われておらず、血縁関係は群れ動態の状況から推測している状態である。本研究課題では、DNA分析により遺伝的な関係を明確にすることは不可欠である。そこで、次回の調査ではゴリラの糞からDNAを収集する予定である。ゴリラは毎晩ネストと呼ばれる寝床を作って寝ることが知られており、そこに糞をする。そのネストサイトから糞DNAを採集することで、群れのすべてのメンバーのDNAを網羅的に得ることができる。
帰国後、同じ研究チームの研究者の指導の下、DNA分析を行う予定である。
その後、行動データおよびDNA分析による父子判定の結果を踏まえて、本研究課題の成果をまとめる作業に移行する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Foraging of Hard-Shelled Walnuts and Variation of Feeding Techniques in Wild Japanese Macaques (Macaca Fuscata)2018

    • 著者名/発表者名
      Masaya TAMURA
    • 学会等名
      27th International Primatological Society Congress
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi