本研究は、世界最高強度コンクリート(PFC)の力学特性や構造性能を明らかにすることで、橋梁の自重の低減、スパン長大化、またそれらに伴う建設コスト・期間の縮減等を達成するようなPFCを用いた新しい構造形式の実現に資することを目的としている。このため1.力学特性の把握、2.力学モデルの提案、3.PFC部材のせん断耐力評価、4.PFCを用いた新構造形式の構造性能評価、の4ステップに分かれた研究計画とし、本年度は3,4に注力した. 平成30年度は、まず昨年度から実施してきたPFCプレキャストセグメントを用いた外ケーブル方式PCはりの曲げ試験を引き続き行い、その性能評価を試みた。結果、40㎜と薄肉の断面下縁に30MPaあるいは40MPaという大きなプレストレスを与えたPFCはりは、セグメント接合部に起因する脆性的な破壊や曲げ圧縮破壊、またはせん断破壊に至ることなく、最終的には外ケーブル降伏が先行する曲げ引張破壊に至ることを見出しており、PFCを用いた新構造の実現可能性を評価することができた。 次に、PFC棒部材のせん断耐力評価のための実験的検討を行った。300MPa以上の圧縮強度を有するPFCではせん断挙動についての検討が限られている。そこでPFC棒部材のせん断耐力に対してプレストレス量、せん断スパン比および軸方向鉄筋比が及ぼす影響を検証した。結果、そのせん断耐力に対してプレストレス量およびせん断スパン比が影響することが確認された。また、既往の超高強度材料に対するせん断耐力算定式を用いる場合、そのせん断耐力のうちの補強繊維分担分およびコンクリート分担分の算定精度を向上させるためには、既往の算定式では考慮されていないせん断スパン比の影響を適切に考慮し、さらに斜めひび割れ角度の算定精度を向上させる必要があることを実験的に見出しており、PFCを用いた構造部材の設計に資する研究成果となった。
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