研究課題
本研究の目的は、火星隕石の化学分析から、火星地殻の進化に新たな制約を与えることである。これまで火星地殻の研究は主に探査から行われてきたが、近年、地殻成分を含む火星隕石が発見されたことにより、さらに詳細な研究が可能となった。本研究では、地殻成分を多く含むと考えられる二つの火星隕石に着目し、元素濃度分析および同位体組成分析を行う。ザガミ隕石は火星隕石の中で唯一、ストロンチウム(Sr)同位体組成が異なる複数の岩相からなる。この特徴から、複数の地殻成分が混入されている可能性が強く示唆されているが、より精確な議論をするためには、他の元素の同位体組成も獲得されなければならない。我々はSr同位体組成のことなるザガミ隕石の岩相について、鉛(Pb)同位体組成分析を行った。ザガミ隕石のPb同位体組成について、先行研究のSr同位体組成と整合的な結果を得ることに成功した。すなわち、ザガミ隕石には火星上の複数の成分が含まれていることになる。また先行研究で報告されている他の火星隕石のPb同位体組成と比較することで、ザガミ隕石は火星隕石の中でも不適合元素(例えば、SrやPb)に富むマントルに由来し、その形成過程で表層の火星地殻成分を取り込んでいることが分かった。この研究成果をフランス、パリで開催された著名な国際学会(Goldschmidt2018)で口頭発表した。この他にも、表面電離型質量分析計を用いたPb同位体組成分析法の開発にも取り組んだ。この結果は日本地球化学会2017でポスター発表され、学生発表賞を受賞した。
2: おおむね順調に進展している
実験は計画通りに進行し、その結果も計画当初に予想していた通りであった(詳細は【研究実績の概要】に記載済み)。
本研究は二つの火星隕石に着目する。一つは既に分析を終えたザガミ隕石であり、もう一つはNWA7034隕石である。NWA7034隕石は火星隕石中で最も古い結晶化年代(約44億年前)を持っており、形成直後の火星地殻の情報を獲得できる。隕石試料は既にニューメキシコ大学のAgee教授にご提供頂いており、比較的最近(約2億年前)形成されたザガミ隕石の結果と比較することで、火星地殻の進化が明らかになる。
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Earth and Planetary Science Letters
巻: 474 ページ: 180-189
10.1016/j.epsl.2017.06.044