研究課題/領域番号 |
17J09763
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
飛田 南斗 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 火星隕石 / 地球化学 / 放射性同位体システマティクス |
研究実績の概要 |
火星隕石NWA 7034は探査によって得られた火星表層に類似する組成を持ち、代表的火星地殻の研究を可能とする唯一の火星隕石である。ジルコンのU-Pb法から~4.4 Ga、~1.3 Gaの年代が報告されており、それぞれが結晶化年代と角礫化年代を表すと考えられている。現在、~1.3 Ga、~4.4 Gaの火星地殻のPb同位体組成を決定し、それぞれを比較することで、その間にどのような地質イベント(溶融イベントや小天体の衝突、水の影響など)が発生したか制約することができる。 二年次の研究として、全岩試料の微量元素濃度とPb同位体組成(現在の火星地殻を表す)を測定し、U-Pb比を用いた計算から~1.3 Gaの初生Pb同位体組成を決定した。 先行研究で報告された~4.4 Gaの初生206Pb/204Pb同位体組成、本研究で決定した~1.3 Gaの初生206Pb/204Pb同位体組成、現在の206Pb/204Pb同位体組成を比較した。206Pb/204Pbの時間変化は、206Pbの親核種である238Uと安定同位体である204Pbの比238U/204Pb(μ値)に依存する。本研究で決定した三つの時代の火星地殻の206Pb/204Pbの時間変化は一つのμ値では説明できず、最低でも三つのμ値を必要とする。すなわち、現在の火星地殻にはμ値の不均質が存在し、過去に最低でも2度μ値を変化させる地質イベントが発生したことが分かった。一度目(~4.4 Ga)はμ値を低下させるイベントであり、例えば流体の関与が疑われる(UはPbに比べ流体に溶出しやすいため)。二度目(~1.3 Ga)はμ値を上昇させるイベントであり、例えば小天体衝突による温度上昇の影響などが考えられる(PbはUに比べ蒸発しやすいため)。三年次では岩石学的な知見を組み合わせ、より考察を深めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験を完了し、期待していた結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
二年次に引き続き、NWA7034隕石の実験を進める。二年次で得られた結果に岩石学的知見を加えることで、古い火星地殻についてより詳細な議論が可能となる。 一年次に得られたZagami隕石の結果と、二・三年次に得られたNWA7034隕石の結果とを比較し、44億年前から現在までに火星地殻で起きた地質イベントを明らかにする。
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