研究課題/領域番号 |
17J09827
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石塚 真太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | ボノボ / チンパンジー / 集団間関係 / DNA |
研究実績の概要 |
ボノボは性成熟後にメスが集団間を移籍する父系社会を形成する。そのため集団内のメスはいわば「よそ者」同士であるが、メス間関係は極めて親和的である。この背景には、血縁関係のあるメスが同じ集団に移入している可能性がある。そこで我々がコンゴ民主共和国ワンバ村周辺に生息する隣接3集団の野生ボノボの経産メスを対象に、常染色体上マイクロサテライト8座位の遺伝子型、およびミトコンドリアコントロール領域950baseの塩基配列からハプロタイプを決定した。また、遺伝分析の結果、およびデモグラフィデータを用い、全移籍メスに対する隣接集団に移籍するメスの割合を推定した。推定の結果、少なくとも約34.3%のメスが隣接集団に移籍すると推定された。 また、チンパンジーとボノボは系統的に最も近縁であり、社会システムにおいて多くの共通点を持つが、オスの他集団オスに対する攻撃性は大きく異なる。この違いは隣接集団に属するオス間の血縁の分化で説明できる可能性がある。そこで我々はウガンダ・カリンズ森林保護区内に生息する隣接2集団の野生チンパンジーのオス、コンゴ民主共和国・ルオー学術保護区内に生息する隣接3集団の野生ボノボのオスを対象に、非侵襲的に採取したDNAを用いて集団内および隣接集団の個体間血縁度を推定した。また、常染色体上マイクロサテライト8座位、Y染色体上マイクロサテライト10-12座位の分析から、隣接集団間の常染色体、Y染色体の遺伝的距離を測定した。ボノボでは、集団内のオス間の平均血縁度は隣接集団のオス間のそれよりも高かった一方で、チンパンジーでは、集団内のオス間平均血縁度と、隣接集団のオス間平均血縁度に差が見られなかった。また、常染色体、Y染色体の遺伝的距離は、ボノボとチンパンジーの両種で同程度の値を示した。両種間の他集団オスに対する攻撃性の違いは、血縁とは別の要因で説明できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特別研究員採用二年目、地上生草本に残された唾液を野生ボノボの新たな非侵襲的遺伝試料の採取方法を開発し、国際誌に投稿し、受理、出版された。また、カリンズ森林のチンパンジー、ワンバ村周辺に生息するボノボの遺伝分析に取り組み、ボノボのメスの移籍パターンや、ボノボ、チンパンジー両種の隣接集団のオスの血縁構造について明らかにした。これらの研究結果は、国際誌に投稿済、あるいは投稿直前段階となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず、研究①「ワンバの野生ボノボにおける血縁メスの分散パターン」、及び研究②「Pan属二種における隣接集団間のオスの遺伝分化の比較」を国際誌に出版する。その後、昨年度に出版した国際誌「Paternity and kin structure among neighbouring groups in wild bonobos at Wamba」を含めた学位論文を執筆する。
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