研究課題/領域番号 |
17J09858
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
三好 悠太 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 転流 / ソース・シンク関係 / 放射性同位体 / イチゴ / 施設園芸 / PETIS |
研究実績の概要 |
イチゴ生産において、光合成産物のソース(葉)からシンク(果実)への転流は、収穫対象器官の肥大成長や物質集積を支配し、収量や品質に直接影響を及ぼす重要な生理機能である。イチゴ生産の高収益化および安定化のためには、転流動態に基づいた環境管理技術の確立が求められており、転流プロセスの解明が喫緊の課題となっている。本研究では、光合成産物の転流動態を植物非破壊かつリアルタイムで可視化できるポジトロンイメージング技術(PETIS)を利用し、光合成産物の転流動態を時間・空間連続的に定量評価する。得られた情報に基づき、生産現場での転流動態を評価可能なモデルを構築し、転流動態に基づいた環境管理技術の確立を目指す。 平成29年度は、「課題Ⅰ:RIイメージング技術を用いてイチゴの転流プロセスを可視化する実験システムの構築」、「課題Ⅱ:イチゴのソース・シンクユニットの対応関係の解析」および「課題III:転流プロセスの積分的解析」を実施した。 課題Ⅰでは、イチゴ株におけるソース葉からシンク果実への炭素動態を可視化するための実験系を構築した。 課題Ⅱでは、課題Ⅰで構築したシステムを用い、同一個体の異なる葉に11CO2を投与し、11C光合成産物が果実に輸送される過程をPETISで評価することで、シンク果実への転流に寄与するソース葉の対応関係を明らかにした。シンク果実への転流には主に果房下位葉が寄与しており、さらに葉位によって光合成産物の転流先となるシンク果実がそれぞれ異なることが確認された。 PETISによる転流動態の評価は、放射性同位体である11C(半減期20.3分)を利用しているため、ソース葉への11C投与後およそ3時間に限られる。課題Ⅲでは、PETISでは評価が難しい長期的な転流動態を13Cトレーサー法によって定量評価した。数日間の環境作用を受け変動した転流動態の積分的情報を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画のとおり、課題Ⅰでは、PETISを用いた光合成産物転流動態の時間・空間連続的な定量評価システムを構築し、課題ⅡではPETISを用いてイチゴ株における光合成産物のソース・シンク対応関係を明らかにした。さらに課題ⅢではPETISでの評価が困難な光合成産物転流の長期的な動態について13Cトレーサー法を用いて解析した。本年度において実施すべき研究を遂行しており、次年度の研究遂行に必要なデータを取得していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
光・気温・湿度・二酸化炭素濃度等の環境作用を受け変動する転流動態を、放射性同位体11Cを用いて評価する。また、PETISで得られた転流動態の微分的情報と13Cトレーサー法で得られた積分的情報を統合し、生産現場における転流動態の評価を可能とする動的モデルの構築を検討する。
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