研究課題/領域番号 |
17J09895
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 達矢 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ブラックホール / 重力波天体 / 連星中性子星合体 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、重力波天体と関連した研究を主に行った。 まず、連星ブラックホール合体の観測を受け、合体後のブラックホールが高速回転することに注目し、銀河系内の高エネルギー天体としての役割を論じた。重力波観測から得られた合体頻度を用いて銀河系内での個数を見積もり、さらに星間物質の降着を考慮することでブラックホールジェットの光度分布を求めた。その結果、連星合体後のブラックホールは銀河系内の宇宙線源になる可能性を明らかにした。さらに、同様の手法を銀河系の星形成史から示唆される孤立ブラックホールに対しても適用し、降着流の性質を精査することで、孤立ブラックホールがX線新星という突発天体を駆動している可能性を明らかにした。これまで孤立ブラックホールはその存在が予言されていたが、観測されたことがなく、ミッシングブラックホールとも呼ばれていた。本研究結果は、これらの一部が既に観測されていたことを示唆するため、今後の追観測とも関連して非常に重要である。 また、連星中性子星合体の検出の報を受け、合体後に形成される超臨界降着するブラックホールからのエネルギー注入が可視赤外電磁波対応天体に与える影響を議論した。通常、可視赤外対応天体は重元素の放射性崩壊で駆動されると考えられているが、ブラックホールからのエネルギー注入だけで駆動できることを明らかにした。これは連星中性子星合体が重元素の起源か否かを議論する上で重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初計画していた合体前後の連星ブラックホールからの放射について議論することができた。特に、放射の光度分布を計算する手法を確立し、それを連星ブラックホールだけでなく、銀河系内の孤立ブラックホールにも適用することで、孤立ブラックホールによるX線新星モデルという従来の常識を覆すような知見が得られたことは非常に大きな成果である。 また、連星中性子星合体の観測に迅速に対応し、ブラックホール降着という観点から電磁波対応天体を議論できたことは非常に有意義であった。この成果は当初は予定されていなかったものなので、計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度観測された連星中性子星合体は、数十年に一度起こるかどうかの天文学的に非常に貴重な天体現象である。よって、連星中性子星合体との関連を意識しつつ、次年度は研究を遂行していく予定である。まず、連星中性子星合体後の超臨界降着ブラックホールに着目し、そこから駆動されるジェットのダイナミクスと放射を議論する。現在、アウトフローからの放射は残光として観測されているので、残光の理論計算からアウトフローの性質に迫れると期待できる。さらに、合体後の飛散物質について、その性質を調べる方法を提案する。以上の内容は、当初計画していた超臨界降着するブラックホールからの放射計算に対応している。
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