研究課題/領域番号 |
17J09970
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
平片 悠河 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 嫌気性原生動物 / UASB法 / 都市下水処理 / 細菌捕食性 / メタン生成 |
研究実績の概要 |
本研究は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するため、嫌気性原生動物の至適培養条件を解明し、UASB槽内に原生動物を高濃度に保持することで、高い有機物除去率・メタン生成量を達成できる最適運転条件を確立することを目的としている。本年度は、原生動物の生理学的特性を明らかにするために、昨年度に引き続き、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みた。原生動物の培養には無機塩培地に、基質としてEscherichia coliを添加し、室温、嫌気条件下で培養を行った。培養実験の結果、Cerocozoa門に属するCercomonas sp. ATCC 50367に近縁(相同性97%)な鞭毛虫類を培養することに成功した。 本年度に培養に成功したCercomonas sp.と昨年度に分離した嫌気性原生動物Cyclidium sp.、Trichomitus sp.の3種を様々な細菌を基質として培養実験を行った結果、3種の原生動物は、捕食可能な細菌種及び代謝される有機酸が異なった。よって、これらの原生動物は種ごとに異なる捕食性、代謝経路を持つことが明らかになった。さらに、13C標識されたE. coliを用いたトレーサー実験を行った結果、すべての実験系から13CO2が検出されたため、13C標識されたE. coliが原生動物に捕食、分解されたことが明らかとなった。さらに、Cyclidium sp.の実験系においては13CH4も同時に検出された。Cyclidium sp. 細胞内にはメタン生成古細菌が共生していることが確認されており、Cyclidium sp.の代謝で発生した二酸化炭素が、メタン生成古細菌に受け渡され、メタンへ転換されることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嫌気性処理における原生動物の知見は少なく、特にUASB槽内の原生動物種の多くは未培養であり、その生理学的特性も不明なものが多い。そこで本研究ではこれまで、原生動物の最適な環境条件や増殖因子に関わる情報を明らかにするため、UASB槽内の原生動物の分離培養を試みてきた。その結果、3種の嫌気性原生動物の分離培養に成功し、それぞれの種が異なる捕食性、代謝経路を持つことが明らかになった。しかし、原生動物の増殖を促進できる因子に関する情報は得られなかった。今後は、嫌気性原生動物の機能を活用した都市下水処理UASB法の安定化・高性能化を達成するためには、原生動物を高濃度に培養できる条件を調査していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
都市下水を処理するUASB槽内で原生動物を高濃度に維持できる運転条件を確立するため、今後は、これまでに培養に成功した嫌気性原生動物種の最適な生育条件を調査する。具体的には様々な基質での原生動物の培養実験を行い、最も高い最大増殖量、増殖速度が条件を調査する。また、原生動物の培養には、補助基質として脂質や脂肪酸を添加することが必要であることも明らかとなっており、原生動物の増殖を促進しうる補助基質などの条件も調査していく。これらの得られた情報を基に、原生動物の高濃度培養に最適な環境条件(温度、pH、ORP[酸化還元電位])、基質(微生物・有機物の種類、基質濃度)、増殖促進因子等を明らかにする。
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